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預貯金1114円、借金50万円…“大阪放火犯”から相談を受けた行政書士の告白「もしあの時…」

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 もしあの時――。

 昨年末、大阪・北新地で放火殺人事件を起こし、25人の命を奪った谷本盛雄容疑者(61=死亡)。実は、事件の4年ほど前に“ある目的”で大阪市内の行政書士事務所を訪ねていた。

 対応した行政書士のAさんが証言する。

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「生活保護の相談で谷本が事務所に来たのは、17年2月13日のことでした」

計画的に犯行に及んだ谷本容疑者

 谷本はうつむき加減でこう告白したという。

「私は長男を刺して刑務所に行っていた人間です。だから、家族には頼れないんですわ。出所して生まれ故郷の大阪に戻ってきたんやけど、就職の面接でええところまで行ってもネットで検索すれば過去の犯罪が出てくる。結局不合格や」

 08年に妻と離婚して孤立感を深めていた谷本。11年には長男を包丁で刺し、4年間の服役を経験した。

「『収入源だった(西淀川区の)物件の家賃収入が途絶え、自分で借りていたアパートの家賃も払えなくなり、生活が困窮している』と訴えていた。アパートを退去後は、浪速区にある1泊1300円の簡易宿泊所に半年ほど滞在していたそうです」(前出・Aさん)

 谷本は87年、西淀川区の3階建て民家を購入。離婚後もそこを貸し出して月7万円の家賃収入を得ていたが、16年末に税金滞納で差し押さえられてしまう。「週刊文春」が入手した生活保護の申請書類によると、預貯金は僅か1114円。さらに消費者金融から50万円の借入金もあったようだ。

 Aさんが続ける。

「谷本の申告通りに申請書類を作成しました。行政書士費用の4万5000円もきちんと支払ってくれた。ところが、彼が浪速区に持参すると、担当者から『此花区に持ち家があるのならば、そちらに引っ越せばいい』と言われたそうです」