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 事件後、小日向被告は逃亡先のフィリピンで身柄を抑えられ、パスポートを偽造した罪で警視庁に逮捕された。そして事件発生から1年以上を経た2004年2月、群馬県警は小日向死刑囚を『前橋スナック銃乱射事件』の実行犯として逮捕した。

「正直、彼が犯人だと知ったときはかなり驚きました。私はちょうどこの頃、松江刑務所を出て牧師の道を志しましたが、ヤクザのままだったら私が小日向のようになっていたかもしれない。他人事とは思えませんでした」

小日向をはじめ前橋スナック銃乱射の実行犯ら3人が逮捕された後、矢野睦会事務所にはいった家宅捜査 ©️共同通信社

「天国への切符を切りに」進藤牧師が小日向に面会したワケ

 新米ヤクザ同士で出会い、それから一方は牧師、そして一方は死刑囚になった。まったく別の場所にたどり着いた2人だったが、小日向死刑囚の死刑確定が迫る2009年頃、進藤牧師は自ら東京拘置所へ「天国への切符をきりにきたよ」と面会に行った。

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「ある幸平一家の関係者から『小日向は支援するな』と言われました。小日向が供述した銃乱射は矢野死刑囚の指示だった、という主張はヤクザでは許されぬ“親を売る行為”だったからです。それでもどうしても会いに行きたかった。蓋を開けてみると、その関係者も小日向に差し入れをしていたんですけどね。

 小日向とは3回ほど面会して、他愛ない話をしました。キリスト教には興味がなさそうでしたし、(伝道の)下心があると思われても嫌なので、キリスト教についての話はせず、同じ元ヤクザとして、同じ人間として話をしました。

進藤牧師(本人のInstagramより)

 死刑が確定して面会できなくなってからは、文通を継続的に交わしはじめました。それで、2020年くらいから伝道的な手紙を書くようになったんです。2年前くらいに小日向の息子が死んで、彼も相当ショックだったんでしょう。そのタイミングで『息子のためにも自分が天国に行ったほうがいい』とクリスチャンになる決意をしてくれた。それだったら人生を悔い改めないといけないね、と」

 そうして小日向は進藤牧師の代理で面会にきたクリスチャンの弁護士の前で信仰を「告白」した。プロテスタントでは信仰することを神と人に明言すれば、クリスチャンとして認められるのだ。