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親との「遊び」が子どもの非認知能力の発達を促す

「ゴリラのオスは特別子育てに熱心というわけではない。新生児には無関心だし、生後一年間は母親も子供をオスに近づけない。子供がオスを頼るようになった後も、オスは積極的に子供に近づこうとはしない。ただ、子供に対してすこぶる寛容で、子供が接触してきても拒まない。子供たちが近くで食物をとることを許し、自分の体の上で遊ばせ、けんかの仲裁をしたり、外敵を追い払ったりする。教育者というよりは物わかりの良い保護者であり、子供の遊び相手といった役割を果たしている」

(「家族の自然誌:初期人類の父親像」黒柳春夫他編『父親と家族――父性を問う』早稲田大学出版部所収)

 このようなゴリラの父親の子どもとの接し方は、人間社会の父子の関わりに非常に似てはいないだろうか。そして、父子間の遊びのようなやりとりには、子どもの学びとしても、大きな教育効果があるのである。

 生態学者の河合雅雄も、遊びと社会性の関係について説く中で、現代の子どもたちは遊ぶ仲間も遊びの場も奪い取られてしまっているので、親が子どもと遊ぶことが必要な時代になっていると指摘している。

勉強や習い事より「親が子どもと遊ぶ」大切さ

 そして、親の余剰エネルギーの多くが子どもの教育(これは勉強や習い事に駆り立てることを指すものと思われる)に向けられていることが、かえって子どもの精神発達を阻害しているとし、子どもと遊ぶように奨励する。

(『子どもと自然』岩波新書)

 かつての子どもたちは、路地裏や空き地で仲間たちと集団遊びをしたものだった。それは貴重な学びの場でもあった。だが今では、狭い路地がなくなり、道路で遊ぶことができなくなった。防犯上、安全上の理由から、小さな子どもたちだけで集まって遊ぶ姿をみることもなくなった。

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 さらに小学校入学前からの塾通いや習い事といった子どもビジネスが盛んになるばかりの今、親が子どもと遊ぶなかで、社会性をはじめ非認知能力の発達を促すことは必要不可欠になっている。