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自然体験の豊かな子どもは自尊感情が高い!? 「父親」と「子ども」が遊ぶことの意外な“教育効果”とは

『イクメンの罠』より #2

2022/02/17
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待つことができない心理

 近頃は、ゲームやスマホに没頭することによって、待つことができない心が生み出されている。即座に反応がないとイライラする。さらに言えば、ゲームの世界は、プログラムされているルールに従って反応すればうまくいくため、いったんその世界に慣れてしまえば、自分が世界をコントロールしているといった幻想を抱きやすい。それにより、何でも思い通りにならないとイライラするといったことになりがちである。

 しかし、現実は厳しい。人生というのは思い通りにならないことの連続といってよい。そんな人生をしぶとく前向きに生き続けることができるような心を培う必要がある。

 自然というのは、なかなかこっちの思い通りにならないところがあり、自然体験は思い通りにならない人生を生き抜くための忍耐強さや知恵を与えてくれる。さらには、自然とのふれあいは、感動する心や待つ心を育ててくれる上に、あらゆる発想の源にもなる。

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父親の遊びを通した貢献

 最近は、自己肯定感というものに注目が集まり、教育界でも子どもたちの自己肯定感を高めるにはどうしたらよいかが重要な課題となっている。この自己肯定感にも自然体験が関係していることを示唆するデータがある。

 2015年に公表された国立青少年教育振興機構による「高校生の生活と意識に関する調査報告書」によれば、自然体験の豊かな者ほど自尊感情が高いという傾向が明らかにみられる。この自尊感情というのは以前から心理学でよく用いられてきた用語で、意味としては自己肯定感と同じと考えてよい。自然体験の豊かさが自己肯定感につながっているとしたら、自然体験の乏しさを何とか補っていく必要があるだろう。そこも父親の遊びを通した貢献が求められるところである。

【前編を読む】〈イクメンブームへの疑問〉そう簡単に「休みます」とは言えない…“育児ができない父親”が抱える“無視されがちな事情”に迫る

イクメンの罠(新潮新書)

榎本博明

新潮社

2022年1月15日 発売

自然体験の豊かな子どもは自尊感情が高い!? 「父親」と「子ども」が遊ぶことの意外な“教育効果”とは

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