学校も支援の方法が分からない
「家庭の問題には入りづらい。しかも、何をどうしたらよいのか、という答えを持たずには介入しにくい。逆にいえば、何かしらの答えがあれば関わりやすくなるので、支援団体が増えていくのは良いことだと思う」(中学校、兵庫県)
「ヤングケアラーは家庭の問題で踏み込みづらい。具体的な支援はスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに行ってもらうべきだ」(定時制高校、A県)
「家族の問題がとても多く、学校では支援できない。どこに相談したら良いのか、相談しても対応してくれるかどうかもわからない。18歳以上の生徒も多く、相談窓口がどこになるのかがわかりにくい」(通信制高校、C県)
保護者から干渉を拒否された事例もあった。B県の定時制高校は、ある女子生徒が家事や、幼いきょうだいの学校の提出物・宿題の世話などをしており、不登校の傾向があったと報告した。しかし、その父親が外部からの支援を求めなかった。「長女である生徒が家事をするのが当たり前という考えだった」という。
対応をマニュアル化するのではなく、支援の行動に移す重要性
一方、学校が手探りをしながらカウンセラーやソーシャルワーカーなどと連携し、支援に結びつけた例も複数あった。
兵庫県のある中学は、精神疾患の母、認知症の祖母と3人で暮らす中3の女子生徒が在学していると明かした。家事を担っていた祖母の症状が進んだうえ、母はかかりつけの病院にもほとんど通院しておらず、この生徒は不登校気味だったという。教職員らは女子生徒と一緒に進路を考え、スクールソーシャルワーカーが進学手続きを手伝った。祖母が介護サービスを受けられるよう市に要請したが、市の担当部署とは「温度差がある」という。学校だけで対応することに限界を感じ、福祉行政との役割分担や情報の共有を訴えていた。
東京都のある中学からも同様の訴えが寄せられた。
この中学では、幼いきょうだいのケアに追われていた女子生徒の母親に対して、教員が粘り強く接触を重ね、母親にも必要な経済的支援などが届くように市の担当部署へつないだという経験を持っていた。
「中学入学までの情報をそれまでの所属機関などが持っていることもあるが、現状は積極的に情報を収集しないと過去の情報がわからない。市や児童相談所の情報を一括管理してほしい。対応をマニュアル化するのではなく、経験や専門性を生かして、気づいたことはためらわずに関係機関と情報共有し、支援の行動に移すことが重要だ」