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「学校ができることはあくまで教育」「福祉や支援ではない」…家族の“介護”に疲弊するヤングケアラーたちに対する教育機関の“驚愕の言い分”

『ヤングケアラー 介護する子どもたち』より #2

genre : ニュース, 社会

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親に精神疾患のあるケースは少なくない

「精神疾患について話してもよいと思える社会がほしい」。全国調査にある生徒が寄せた、このわずか1行の自由意見をもとに、取材班はもう1本記事を配信した。

“「精神疾患を話せる社会に」ヤングケアラーの生徒が記した心の叫び”

 この生徒がどんなケアをしているのかは、調査報告書からは読み解けない。しかし精神疾患に対する差別や偏見を受けて、患者本人やケアを担う家族が孤独に陥る問題は、かねて研究者と支援者が指摘してきた。

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 ヤングケアラーが担うケアの対象・内容にはさまざまなパターンがあるが、「親に精神疾患がある」というケースは代表的な類型の一つだ。政府の全国調査によると、父母をケアしているヤングケアラーのうち、父母の状況(複数回答)は「精神疾患、依存症(疑い含む)」が中2が17.3%、高2は14.3%。これは「身体障害」とほぼ同じ割合だ。

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 精神疾患のある親と暮らす子どもは、親に代わって家事をしたり、不安定な言動を長時間受け止めるなどの感情的なケアを担ったりすることが多い。緊張感の中で親に投げかける一つ一つの言葉を丁寧に選び、なだめる。時には心配で親のそばを離れられないこともある。政府の全国調査に関わった大阪大教授の蔭山正子は指摘した。

「例えば、話を聞くというケアは、延々と同じ話の繰り返しの時もあれば、沈んだ気分の時もある。子どもが親に寄り添うことは簡単ではない」

 こうしたケアを担う子どもたちは、周囲に相談できずに孤独に陥ってしまいがちだ。蔭山や精神看護学の研究者、横山恵子らの研究グループが20年末に公表した「精神疾患のある親をもつ子どもの実態調査」からも、それは読み取れる。

子どもを追いつめている、精神疾患への理解が十分ではない環境

 この実態調査は、精神疾患の親をもつ子どもの会「こどもぴあ」に参加経験がある240人に対して、小中高時代のケアや相談の体験、学校内外での援助などについてウェブでアンケートをとった。回答したのは120人で、年代は20~30代が約52%、40代が約23%。親の病名(複数回答)は統合失調症が半数の約50%、うつ病が約20%だった。

 ケアの負担・不安を学校に相談した経験がある人は小中高の全時期で1~2割にとどまっていた。相談しなかった理由(自由記述)は「恥ずかしいこと、隠すべきことだと思っていた」という趣旨の回答が目立った。

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