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「学校ができることはあくまで教育」「福祉や支援ではない」…家族の“介護”に疲弊するヤングケアラーたちに対する教育機関の“驚愕の言い分”

『ヤングケアラー 介護する子どもたち』より #2

genre : ニュース, 社会

 病気や障害を抱える家族の介護を行う「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたち。日々、大きな負担を抱えながら過ごす彼らについて、生活の大半を占める「学校」は、どのように実情を認識し、どのような対応をとっているのだろう。

 ここでは、毎日新聞取材班がヤングケアラーの実態に迫ったもようをまとめた『ヤングケアラー 介護する子どもたち』(毎日新聞出版)の一部を抜粋。教育機関の抱える課題、そして教師たちのヤングケアラーに対する本音を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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“「進路変更せざるを得ない」定時制・通信制高校生の学業に深刻な影響”

 ヤングケアラーの生徒の割合は、定時制高校が8.5%(12人に1人)、通信制は11%(9人に1人)で、全日制高校よりも多かった。家族ケアのために全日制への進学を諦めたり、やめたりしたと答えた生徒もいた。

 ヤングケアラーの定時制、通信制の生徒に「世話をしているために、やりたいけれどできないこと」(複数回答)を尋ねたところ、「進路の変更を考えざるを得ない、もしくは変更した」「自分の時間がとれない」「友人と遊べない」「睡眠時間が十分に取れない」などの項目で、定時制と通信制がそれぞれ全日制を上回った。通信制では、1日あたり7時間以上を家族のケアに費やしていると回答した生徒は24.5%に上った。「当初通っていた学校をやめた」という回答も12.2%あった。

 全国調査の関係者によると、当初、通信制は調査の対象外だったが、調査に関する検討委員会の有識者から、対象に含めるよう要請があったという。政府側は「全日制と定時制の比較で十分」と考えていたが、有識者は「ケア負担による進路や将来設計への影響を把握するため、通信制の調査も必要だ」と主張した。

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進路や進学を考える時、家族のために自分の希望を後回しに

 ある現役の都立高校教諭は、参考値とはいえ調査結果に衝撃を受けたと山田(編集部注:毎日新聞取材班記者)に明かした。彼は、定時制で約25年の現場経験がある。

「学校に関わる時間を減らし、その分を家庭に回さざるを得ない子どもの多さを改めて突きつけられた。高校を選ぶ時点ですでに学習が大きく遅れていたり、教育への信頼を失っていたりする子どもは珍しくないんです」

 調査の自由記述には「ケアをしながらでも進める進路がもっと広がってほしい」というコメントもあった。進路や進学を考える時、家族のために自分の希望を後回しにする子どもが少なくない、という可能性を示唆していた。