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「学校ができることはあくまで教育」「福祉や支援ではない」…家族の“介護”に疲弊するヤングケアラーたちに対する教育機関の“驚愕の言い分”

『ヤングケアラー 介護する子どもたち』より #2

genre : ニュース, 社会

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「ヤングケアラー」を知らない学校も

 さらに、生徒側の調査結果を踏まえれば、学校側と生徒の間にそもそも「認識のギャップ」があるのは明白だった。

 「ヤングケアラーが(在学して)いる」とアンケートに回答した中学は全体の46.6%、高校で49.8%。半数がヤングケアラーの存在を把握していたものの、生徒の調査で判明した「1学級に1~2人」とは認識に大きな落差がある。定時制高校では70.4%、通信制高校では60.0%とやや高く、「想像以上に多くの生徒が、子どもらしい生活ができず、未熟なままで大人の役割を担わされている」と危機感を訴えた通信制高校もあった。

 生徒が周囲になかなか事情を明かさないことを差し引いても、学校側の理解不足は目立っていた。公立中学・全日制高校のうち、「ヤングケアラーという言葉を知らない」「言葉は聞いたことがあるが具体的には知らない」が約4割を占め、逆に「学校として意識して対応している」は公立中学の20.2%、全日制高校ではわずか9.6%に過ぎない。

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 北海道のある中学は「教職員が(生徒の様子を)不自然と思っても対応策が思いつかない。研修で取り上げてほしい」と要望した。東京都のある中学は、スクールカウンセラーなど専門家の働きかけや、相談窓口に関する情報提供を政府などに求めた。大分県のある中学は「(子どもが)当たり前に行っていることが、他人から見れば大変なことがある」とヤングケアラーについて子ども自身に学ばせる必要性に言及していた。

女子生徒のヤングケアラーは見過ごされやすい

 北海道のある中学は、生徒の性別によって早期発見のハードルが変わると指摘した。

「男子生徒が家庭で世話などをしていると違和感があって早く気づくが、女子生徒の場合は、家事やきょうだいの面倒を見ることが当たり前、という社会的な認識があるようで見過ごされやすいと思う」

 虐待などに対応する要対協への通告を含めて、ヤングケアラーを「外部の支援につないだ」と回答した中学は62.4%、高校は31.5%。逆に「学校内で対応」するとした中学は37.9%、高校は62.9%だった。奈良県の中学は「虐待のような緊急性の高い事案でなければ、具体的な支援がない」と指摘した。

【前編を読む】「私とお母さんはセット」統合失調症の母と二人暮らしを続けた中学時代…“ヤングケアラー”だった女性が振り返る親に対する“意外な思い”とは

ヤングケアラー 介護する子どもたち

毎日新聞取材班

毎日新聞出版(インプレス)

2021年11月27日 発売

「学校ができることはあくまで教育」「福祉や支援ではない」…家族の“介護”に疲弊するヤングケアラーたちに対する教育機関の“驚愕の言い分”

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