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「関東を代表する“あの味”」「常盤軒のかき揚げそば」をもう一度…! 今はなき名店「駅そば」復刻までの“険しい道のり”

2022/02/15

「小山駅きそば」は関東の味を代表するような存在として鉄麺ファンに人気だった。2007年公開された新海誠監督の連作短編アニメ「秒速5センチメートル」の中で両毛線店が登場して人気に拍車がかかった。

 その店舗を1991年から委託運営していたのが栃木市内にある「中沢製麺」である。中沢製麺はかつて小山駅3店舗、栃木駅、佐野駅、足利駅で立ち食いそば店を運営していた。もはや「きそば」は栃木県南地域の郷土料理といってもいい存在だった。

人気だった小山駅きそば(撮影 中澤健太)

「駅以外でも食べられるようにして欲しい」

 2021年8月、中沢製麺が東京に進出し、「東京なまめんなかざわ製麺」(豊島区南大塚)をオープンした時、社長の中澤健太さんは「大塚でもキッチンカーを設置してきそばを販売したい」とコメントされていた。つまり、キッチンカー構想は、小山駅で販売終了となる遥か前から始動していたわけである。

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 ちょうどその頃、元々知り合いだった小山市の広告代理店「オフィスヨシダグループ」会長の吉田英樹さんが中澤さんに話を持ち掛けて、キッチンカー「小山のきそば号」構想がスタートしたという。ふたりの考えは至ってシンプルだった。「小山駅きそばを、駅を利用する人以外にも食べられるようにして欲しいという地元ファンからの要望に応えるため」であった。

意気投合した吉田英樹会長(左)と中澤健太社長

キッチンカーはかなりハードルが高かった

 2021年8月からキッチンカーの躯体の設計デザインを始動。車両としての安全性の確保、さらに保健所への衛生管理許可の申請などが相次いだ。

 また、つゆ・麺・天ぷらなどの具材はすべて中沢製麺から仕入れるため、その連携方法などの試行錯誤、提供時の動線の管理や混雑時の整理対応など想定外の事象も含めて、入念にスタッフや中沢製麺とマニュアルを作成する必要があったという。