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ところがこれが意外とハードルが高かったという。そばはもちろん音威子府の畠山製麺なので確保できていたのだが、「つゆと天ぷらはどうにかして調達しなければならなかった」と鈴木さんはいう。つゆの再現がかなり難しく、常盤軒の関係者に何度も聞いては作り直して、試行錯誤に相当な時間がかかったという。
かき揚げが入手できない
「そばつゆ以上に大変だったのがかき揚げでした。独特の天ぷらのレシピを教えてもらうか、あるいは入手するしかなかった」と鈴木さんは続ける。
常盤軒のかき揚げは上に干しエビが彩り添えにのった、野菜など入らないシンプルな天ぷらだ。鈴木さんは最初こそ自作しようと考えたが、逆にシンプルすぎて同じ味が出せない。いろいろ調べていくうちに、「音威子府ではなく名寄の豊岡製麺所で天ぷらを作っていたことがわかった」という。ただ製麺所としても道外への配送は初めての試みで、食の安全などを考慮して進めるのが大変だったそうだ。
復刻版「かき揚げそば」の味は?
常盤軒の味が復活すると聞きつけ、筆者は音威子府TOKYOを訪れた。「常盤軒かき揚げそば」は立派などんぶりに入って登場した。つゆをひとくち。甘みのあるそして、返しが濃く十分出汁の香る深いつゆである。常盤軒と同じ天ぷらはやや小ぶりで綺麗に揚げられているが、つゆに馴染んでほぐれていく。そばは相変わらず黒い太めの麺線でコシが強い。