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大好きな夫と結婚するために

 子供が3か月ぐらいになったとき、3人が暮らすアパートに区役所の職員が来た。国からの命令で「民法772条による無戸籍の実態調査」をしているという。ミミ子は、戸籍上の夫との生活のことを根掘り葉掘り聞かれた。「これに協力すれば、もしかしたら特別に戸籍を作ってもらえるのかもしれない」とミミ子は役所の人に期待した。

 区役所の職員は、ミミ子の家に聞き取りに来たあと、しばらく経ってから、法務局職員という別の人と一緒に再び訪ねてきた。法務局の人が説明をしてくれたが、ミミ子には慣れないその堅い話し方が少し怖かった。説明では、ミミ子のような子供の出生届を出せない母親でも、家庭裁判所で前の夫への調停をすれば、何とか子供の戸籍を作ることができるということだった。

 ミミ子は、家庭裁判所というのも怖かったし、弁護士を雇わないといけないと言われて、ますます「自分には無理だ」と思った。このまま、ひっそり今の夫と、戸籍がなくても「望」を抱いて生きていければいいようにも思えてくる。

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 法務局の職員や法務局の職員が紹介してくれた弁護士からは、「子供には戸籍を作ってあげたほうがいい」「そのほうが家族全員が法律で守られる」と何度も言われた。とはいえ、ミミ子の場合は、戸籍上の夫との離婚の調停から始めなければならない、ということを聞いて、ミミ子は前の夫と連絡を取ることが単純に怖かった。

 弁護士によると「昔はミミ子さんのような無戸籍の子のお母さんは、役所でも“アンタが悪い”と言われて、もっとつらかったようです」「これは法律の落とし穴みたいなもので、ずっと光が当たらなかったことなので、僕たち弁護士も手探りです」ということだった。

 ミミ子は、それでも前の夫への調停をすることは怖かったが、「望のためだけじゃなくて、僕はミミちゃんとちゃんと結婚するためにも頑張りたい」と夫が言ってくれたことで決心した。

 ミミ子は、大好きな夫と結婚するために家庭裁判所の手続を頑張ろうと思った。

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