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 豪華なキャストを集め、地上波テレビでここまで遊んでみせたことは、見ていて痛快だった。いまやテレビの世界では何かにつけてコンプライアンスが叫ばれ、ともすればそれを口実につくる側も表現を抑えがちだが、オダギリはそんな状況に抵抗したのだともいえる。

戦隊もののオーディションで「変身はできません」

 かつてオダギリはアメリカから帰国後、ユナイテッド・パフォーマーズ・スタジオ(UPS)という俳優養成所に在籍した。そのころ、本人いわく《UPSに騙されて(笑)、戦隊もののオーディションに行かされた》が、リアリズムの演技しか勉強していなかった彼は、「僕は変身はできません」と正直に言ったところ、《引きずられるように追い出され》たという(※5)。

『仮面ライダークウガ 特別篇』(東映ビデオ)

 しかし、その場に同席したなかにオダギリに目を留めたプロデューサーがおり、翌年、別のオーディションに彼を呼んだ。このときの作品こそ、俳優・オダギリジョーが世に知られるきっかけとなった『仮面ライダークウガ』(2000~01年)である。このときも本人は乗り気ではなかったが、プロデューサーから、それまでの仮面ライダーのイメージを好きなように壊してほしいと説得され、最終的に引き受けることになった。

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 本人が繰り返し口にしているとおり、彼の本質はやはりインディーズ精神にある。だからこそ映画やテレビの関係者は、マンネリになりそうなところで、彼にそれを打ち破るような役割を任せたくなるのだろう。『カムカムエヴリバディ』でもその期待に応え、朝ドラにこれまでにはない風を送り込んでいることは間違いない。

※1『ステラ』2022年2月4日号
※2『歴史読本』2013年10月号
※3『婦人公論』2006年7月22日号
※4 『キネマ旬報NEXT』Vol.27(『キネマ旬報』2019年8月11日増刊)
※5『週刊文春』2019年9月12日号
※6『すばる』2019年10月号
※7『ステラ』2021年9月24日号