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「農作物と会話する能力」を身に着けた日本の農家
このような制約に加えて、西洋との文化的な違いもあります。良く言われることかもしれませんが、西洋における自然が支配の対象であるのに対し、日本には自然と共生するという環境調和的な自然観が文化的ベースとして根付いています。この価値観は、一朝一夕で出来上がったものではありません。当然ながら、永い歴史の経過の中で作られてきた価値観です。
こうして日本の農家は「農作物と会話する能力」を身に着けていったのです。「農作物と会話する能力」とは、農作物が今何を欲しがっているか、目の前の作物がどのような品種であるのか等を、一目見るだけですぐに把握、判別するような能力と言い換えることもできます。
コンピューター管理で栽培しているカイワレ大根でさえ、その技術の中枢は機械管理のノウハウではなく、それを操作する農家自身の「ソフト」なのです。このような能力は、地理的・歴史的な制約はありながらも、狭い土地の中で何とか利益を上げようと植物と絶えず接し続けることで身に着いていったものです。
日本の農家はこれまで、このような側面を上手く用いた経営戦略によって、生き残りを図ってきました。すなわち大量生産・大量販売を前提とする近代化とは真逆の特徴を伸ばすことによって、経営を成り立たせてきたのです。大量生産のように思える米でさえ、「米の食味ランキング」に明らかなように、味などの品質を重要視しているのです。