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「なんでこんなものを作ったんですか?」

話題を呼んだ「寿司プラモ」。最初は「にぎり」から始まった(秋東精工提供)

 各種メディアでも取り上げられ、意外なヒット商品になった「寿司プラモ」シリーズ。製作秘話を秋東精工の藤原千誉(ちたか)氏に訊いたところ、その発祥はTwitterだという。

「きっかけは、Twitterで『(もしも)寿司のプラモデル(があったら)』という、画像付きの書き込みを見たことです。社内でキットを実際に作れると思ったので、作ってしまいました」(藤原氏)

こちらが「寿司プラモ」の金型(秋東精工提供)
金型のもう一方(秋東精工提供)

 秋東精工は元々、大手メーカーの鉄道模型やロボットプラモの金型を製作している専門メーカーである。「寿司プラモ」開発の背景には、コロナ禍で市場環境が変化するなかで、下請けの仕事だけでなく自社製品の開発をしたいという念願もあったという。しかしなぜ“寿司”にしたのか。

「鉄道やミリタリーといったジャンルはマニアックですが、お寿司なら老若男女、誰でも一度は見たことがありますよね。だから『寿司プラモ』は、親しみやすいモチーフとして興味を惹けると思ったんです」(藤原氏)

「あれは本当に大変でした」という米の出来映えは、お世辞抜きの“本物と見まがうばかり”

 自身も寿司好きであるという藤原氏。特にシャリが好きだそうで、「寿司プラモ」のデザインにあたっては数社の寿司をテイクアウトし、文字通り米一粒レベルまで解体。シャリの米粒の数や形を研究したそうだ。「あれは本当に大変でした」(藤原氏)という言葉の通り、完成品の写真を拡大して見ても、米粒の出来は精巧である。

「1/1スケール寿司プラモ」が成形される実際の様子

「樹脂は金型に流し込むと収縮するので、狙いのサイズを実現するのが難しかったです。金型製作自体を何回もやり直しているので、今の米粒は試行錯誤の結果ですね。また、透明感はありながら、集合すると白く見えるあの色味もポイントです」(藤原氏)

いくら粒は3種類の大きさが用意されており、食品サンプルとしてのリアリティを増している

 ところが、いくら粒のリアリティは“偶然の産物”だという。

「肉厚の部品には製造工程で気泡が入ってしまうことが多く、いわば“成形不良”なのですが、これがいくらだと逆にリアルな感じがしたので、あえてそこを生かすように作っていきました」(藤原氏)

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