昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/02/18

今後、「筋肉芸人」は出てこない理由

――一番難しいですよね、「自由にやれ」というのは。 

きんに君 当時の僕には難しかったです。 

 僕がこんなん言うのもあれなんですけど、筋肉芸人って、もう出てこないと思ってるんですよ。それで僕、自分のことを「ラストマッスル」って言ってるんですけど。 

――ラストマッスル! 

きんに君 “ラストサムライ”みたいな(笑)。というのも、あの時代じゃないとこの芸は成立しなかったと思うんです。

 

 キャラが濃い一発芸人があれだけ出てこれた背景には、芸人の数が増えたというのもありますが、そのキャラをイジってツッコんで笑いに変えてくれる、有能な先輩方の存在が不可欠なんですよ。

 例えばFUJIWARAさん、陣内さん、(ケンドー)コバヤシさん、たむらけんじさん、小薮(千豊)さん、サバンナさん、フットボールアワーさんなどなど、本当に当時の大阪の先輩みなさんです。そんな実力のある方々がいじってくださって形にしてくれたから、今の「なかやまきんに君」があると思っています。

 若き実力者との密な関係があって、『筋肉番付』があって、『めちゃイケ』があって。そういう奇跡が重なってできたきんに君だから、僕は「ラストマッスル」と言ってるんです。 

――人、時代、番組、タイミング……確かに奇跡ですね。 

きんに君 筋肉芸人が出てきづらい理由のもう一つに、暇だったら時間があるので筋トレできる。すると、筋肉は増えていくじゃないですか。筋肉が増えればウケる。ウケたら仕事が増える。でも仕事が増えたら忙しくなって筋トレできなくなって、筋肉は減っていくんですよ。

 筋肉がなくなってくるので、ウケなくなって、仕事は減っていきます。仕事が減ってきて暇になるので、ジムに行って筋肉が増える。筋肉と仕事はこの反比例なんですよ。 

――筋肉ジレンマ!! 

きんに君 筋肉芸人でこれに耐えうる人はなかなかいないと思うので、僕がラストマッスルになりました。もう21年間、これとの戦いですし、今もそれ続いてまして、今後も続くんですけど。

 

 だからこそ、僕はある程度スベってもオンリーワンなので、そこに価値はあると思う。リスクの先に価値があるというか。たとえば今後、筋肉がある子がそれでネタづくりしようと思っても「でもルーレットって、すでにあったな」って思った時点でもう難しいじゃないですか。 

――「これ、きんに君やってたな」みたいになりそうですよね。 

きんに君 吉本の若手にもマッチョ部という、筋肉鍛えてる芸人のユニットがありまして。それを観たマヂカルラブリーの野田君が「やってる内容の8割が、なかやまきんに君さんと同じネタでした」って(笑)。みんな結局、「ヤーッ」とか「ワーッ」とか、あとスベるとか。僕のネタを小さくしたバージョンだったと言ってました。 

――先人が偉大すぎますね。 

きんに君 だからこそ、僕がラストマッスルとしての新しい扉を開いていかないといけないとも思うんです。最後、もうこれができたらラストマッスルの完成だという「悲願」が一つあるんですけど。 

z