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5メートルの高さから飛び降りて脱走した例も

木下 そうですね。欧米は人権にうるさいお国柄であるはずなのに、ドラマなどで見る監獄はトイレやベッドなどすべて丸見えの状態ですものね。あれは日本では無理だと思います。

誉田 そのあたりの意識は日本のほうが敏感なんですね。

木下 なにしろ昔は着替え部屋が別に用意されていたくらいですから。さすがに管理上、無理があるということで廃止されましたが。

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誉田 今は個室が中心なんですよね?

木下 そうですね。時代によっては6人部屋に8人収容するようなこともありましたけど。

写真はイメージです ©iStock.com

誉田 一方で、受刑者だけでなく刑務官に対するケアも必要な気がします。罪と向き合う受刑者にふれるうち、刑務官が心を病んでしまうことはないのでしょうか。

木下 原因は様々でしょうから一概には言えないですけど、たしかにそういう人もいます。鬱とか適応障害とか。でも、それは民間企業も同じですよね。

平穏な状態が長く続くと、気が緩んでしまうところもある

誉田 脱走を試みる人もいるんですか?

木下 私は直接関わったことはありませんが、長い歴史の中ではそういった事故もあります。

誉田 ああ、やはり実際にいるんですか。そういえば少し前に、警察署で留置されていた被疑者が、面会室の扉を蹴破って逃げた事件がありましたが、刑務所でも逃げられることがあるんですね。

木下 10年近く前に、広島刑務所から男性の外国人受刑者が逃げたことがありましたけど、あの時は5メートルもある高さを飛び降りて逃げているんです。

誉田 さすがに想定外だったんでしょうね。

木下 何より、平穏な状態が長く続くと、刑務官の側もどこかで「たいてい大丈夫だろう」と気が緩んでしまうところもあるんですよね。

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