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「とにかく自立するお金を貯めなければならないので…」意外と知らない女性受刑者たちの出所後“就職事情”に迫る

『誉田哲也が訊く!~警察監修プロフェッショナルの横顔~』より #2

genre : エンタメ, 社会

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環境改善が進められる女子刑務所

誉田 それでも、木下さんのキャリアを通して、女子刑務所を取り巻く環境というのは少しずつ良くなっていっているんですか?

木下 それは制度的な面も設備的な面も含めて、間違いなく良くなっていますね。かつての刑務所はとにかく閉鎖的で、実態のよくわからない領域でしたけど、それでは世間の理解が得られないということで、どんどん開かれていっているんです。

誉田 それは具体的にはどのような点ですか。

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木下 たとえば、刑務官以外にも様々な民間の方々が関わるようになったのもその一端です。社会復帰を円滑にするために必要なケアを、いろいろな機関や協力者と一緒に取り組んでいます。

誉田 なるほど。そういう取り組みは更生のための一助にもなりそうですね。

木下 それから、平成25年(2013)には当時の千葉県知事だった堂本暁子さん主導で、「女子刑務所のあり方研究委員会」が設立されています。これはその名の通り、女子刑務所の課題を洗い出して改善に取り組むための研究会ですね。堂本さんの知事ネットワークを生かして、全国で地域の支援体制を構築する、いいきっかけになりました。

日本の刑務所は非常に穏便で良心的

誉田 こうしてお聞きしていると、刑務所というのが単に罰を与える施設ではないことがよくわかります。

木下 そうなんです。刑務所はあくまで受刑者に対し、罪と向き合わせて更生を促すための施設ですから。そのためには、なぜ罪に手を染めてしまったのか、きちんと受け止めて自省しなければ、本当の意味での再犯防止には繫がりません。薬物などはとくに、人から「やめなさい」と言われるだけでやめられるものではないですからね。

誉田 海外の映画を見ていると、バカでかい吹き抜けの施設に、物々しい武装をした刑務官が立っているような刑務所がよく出てくるじゃないですか。あれが現実に即しているかはさておき、日本の刑務所は非常に穏便で良心的に思えますね。