刑務所から出所した人や少年院を出た人、執行猶予判決を受けた人のうち、自立した生活が困難な人たちを対象に社会復帰を支援する「更生保護施設」。年間約1万人におよぶという支援対象者たちは、施設内でどのようなサポートを受けているのだろう。

 ここでは、日本を揺るがす重大事件の数々を捜査してきた刑事たちが、小説家・誉田哲也氏のインタビューに答えた対談集『誉田哲也が訊く!~警察監修プロフェッショナルの横顔~』(光文社)の一部を抜粋。女子刑務所の運営管理に長年携わり、現在は保護司として更生保護法人施設の施設長を務める木下登志美氏へのインタビューから、更生保護施設、刑務所で過ごす女性たちの実情に迫る。(全2回の2回目/前編を読む)

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知られざる女性受刑者たちの就職事情

誉田 木下さんが現在お勤めのこの更生保護施設は、どのような施設なんですか?

木下 刑務所を出た人や保護観察中の人を受け入れる、女性専用の更生保護施設です。つまり、刑務所を出たあとの行き場のない人たちが、一定期間ここで暮らしながら、社会復帰を目指すことになります。現在も20代から70代までの女性が生活を共にしています。

誉田 なるほど。何らかの事情で行く宛がない人というのがやはりいるんですね。

木下 そうなんです。また、刑務所でも少年院でも、身元引受人がいなければ仮釈放にならないので、本人が望むのであれば我々が面接をして、身元を引き受け、ここで仮釈放の期間生活することになります。

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誉田 そして、ここで生活の面倒を見てもらいながら仕事や次の居場所を探す、と。

木下 こういう施設が全国に103あるのですが、女性専用施設は7つだけなんです。そして7つのうちの3つが東京都内にあり、1つがこの施設です。

仕事は探せばいろいろある

誉田 そんなに少ないんですね。数としてはそれで十分なんですか?

木下 十分とは言えないかもしれませんが、とりあえず足りていないわけではないようです。行く場所がない受刑者にもいくつかのパターンがありまして、もともと身寄りがない人もいれば、何度も罪を重ねているうちに歳をとり、行き場を失ってしまう人もいます。そういう人が女性受刑者の中のうち、だいたい1割くらいを占めていると思います。

誉田 この施設ではある程度、生活や行動に制限が設けられているということですか?

木下 施設としてのルールもありますが、それぞれ仮釈放を受けるにあたって遵守事項が設定されています。「犯罪者に近づいてはならない」とか、「薬物売買の場に行ってはならない」とか。たとえば薬物で保護観察中の人であれば、月に一度は保護観察所に出頭して薬物検査を受けますが、それ以外は皆さん、頑張って仕事に励んでいます。

誉田 しかし、仕事を探すのもなかなか大変でしょうね。男性であればとりあえず肉体労働でも凌ぐこともできそうですけど、女性の場合はどういう仕事に就く人が多いですか。

木下 幸いここは都市部で場所に恵まれていますので、探せばけっこういろいろあるんですよ。ホテルのベッドメイクとか飲食店とか。