映画監督・五社英雄氏が立ち上げた「チーム五社(五社プロダクション)」は、元警視庁捜査一課刑事が中心に集まり、映画やテレビドラマをはじめとした様々な作品の警察監修を行っている会社だ。
現役を退き、警察監修に携わるのはどのような人物なのか。ここでは、『ストロベリーナイト』などの警察小説を多く手掛ける小説家・誉田哲也氏による、チーム五社メンバーへのインタビュー集『誉田哲也が訊く!~警察監修プロフェッショナルの横顔~』(光文社)の一部を抜粋。知能犯担当としてオレオレ詐欺グループの摘発などに携わってきた元刑事、土井紀人氏のインタビューを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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オレオレ詐欺集団の撲滅を目指して
誉田 土井さんは平成28年(2016)に退職されていますから、チーム五社さんの中でも比較的最近まで現役を張っていらした方ですよね。
土井 そうですね。我ながら、まだ初々しさを残していると思うのですが(笑)。
誉田 とはいえ、やはりご経歴を見ていると凄みがありますよ。非常に多彩なキャリアですが、知能犯担当が多めの印象を受けます。
土井 たしかに知能犯捜査は長かったですね。ただ、私の場合は刑事になったのが少し遅かったのですよ。巡査部長に昇任してからですからね。刑事としては暴力犯捜査や盗犯捜査そして知能犯捜査を、また刑事以外では所轄の地域課や防犯課(現在の生活安全課)、機動隊にも勤務しました。
オレオレ詐欺グループの摘発や壊滅に取り組み、被疑者の取調べも担当
誉田 交通課以外はほとんど経験されているような感じに見えますが、キャリアを通してこれだけいろんなところを経験するケースは警察の中でも珍しいんですか?
土井 どうでしょうね。私よりいろいろと経験されている方もいると思いますが、声がかかるたびに、NOと言えなくて異動に応じていたのは事実です。出世欲もあまりありませんでしたし。
誉田 知能犯担当だった時は、主にどんな事案を担当されていたのでしょうか。
土井 告訴告発事案の捜査や詐欺、横領事件、公職選挙法違反などです。わかりやすいところでは特殊詐欺、いわゆるオレオレ詐欺専門のチームで、グループの摘発や壊滅に取り組み、被疑者の取調べも担当しました。