お金を持っていなくてもターゲットになりうる
誉田 やはり、相当な被害が出ているのでしょうね。
土井 こうした特殊詐欺被害では、家を売らざるを得なくなったようなお年寄りも現実にいらっしゃいますからね。その一方で、半グレ集団の幹部は今も豪華なマンションで生活していたりする。なにしろ彼らは、お金を持っていない人間からもむしり取りますから。
誉田 ないお金を取るというのは、どうやるんですか?
土井 定期預金を解約させたり、消費者金融で借りさせたりというのは当たり前の世界ですよ。あらかじめ下調べしてから電話をかけて、「お宅のそばに消費者金融があるでしょ。車のローンを組みたいと言えば500万円まで貸してくれるから」などと言って現金を用意させるのです。
誉田 そこまでやらされたら、途中で「これはおかしいぞ」と気づきそうなものなのに。なぜ引っかかるのか本当に不思議です。
詐欺グループの一員かを見極めるのも大変
土井 マインドコントロールに近いんですよね。身内が何かトラブルを起こして大変だと言って、相手を心理的に追い込み信じさせてしまうわけです。中には三度も被害に遭ったご婦人もいましたから。
誉田 三度も!
土井 さすがにその方には、二度と被害に遭ってもらいたくない一心から、少し強めの言葉で注意しましたけどね。「あなたが差し出したお金で、彼らは次の詐欺の準備をするのです。あなたは資金を提供しているようなものですよ」と。
誉田 返す言葉もないでしょうね……。
土井 実際、彼らは騙し取った金で表向きに会社経営をしたりしています。詐欺に使う携帯電話が必要なら、有り物を調達するよりも携帯電話ショップをひとつ作ってしまえ、という発想ですからね。あるいは騙しの場所として使うハコ(アジト)が必要なら、不動産会社だって作ってしまいますし。
誉田 そんなに力があるのなら、まともなビジネスをやればいいのに(笑)。
土井 警察側が気をつけなければならないのは、詐欺グループが使った携帯電話の出どころを捜査している途中、彼らの身内、もしくは関係者だと知らずに聞き込みに行ってしまうことですよ。こちらの動きが筒抜けになりますから。
誉田 そうですよねえ。見極めるのも大変だ。