オレオレ詐欺は「ヤクザの沽券」にかかわる
誉田 おお、近年増加中の犯罪ということで、さぞハードワークだったのでは?
土井 日本中に詐欺グループが存在しますから、ときには地方まで出張してアジトを突き止め、摘発していました。また、退職前には犯罪抑止対策部門にも従事し、オレオレ詐欺やアポ電などの犯罪抑止のため、地域住民への広報活動もさせてもらいました。
誉田 それにしても、オレオレ詐欺という言葉が世の中に登場してから何年も経ちますが、なぜなくならないんでしょうね。これだけメディアでも注意喚起がされているのに。
土井 まったくそうですね。ドラマでも、オレオレ詐欺犯が登場するシーンの監修をさせてもらいましたし、それなりに啓発はされているはずなのですが。
中には政治結社の構成員がやっていた事案も
誉田 僕らからすると騙されようがない単純な手口に見えますけど、わりと手の込んだやり口も出てきてるんですか?
土井 オレオレ詐欺など騙しの手口の中には、役者を揃えて仕掛けるような手口もありますよ。たとえば刑事役のかけ子(騙し役)がターゲットとする家に電話をかけ、「あなたのキャッシュカードが犯罪に利用されています。警察では処置できないので、後ほど銀行協会から連絡が入ります」などと言うのです。そして銀行協会を名乗る別の騙し役から電話が入り、「これ以上被害に遭わないようにキャッシュカードを作り替えたほうが良い」「担当の協会職員がちょうどお宅の近くまで来ているので向かわせます。現在使っているカードを用意してください」「暗証番号も変えたほうがいい。確認のため、いま使っている暗証番号を教えてください」とやる。そうして現れた職員に扮した受け子が、「新しいカードに替えましょう」と、カードと暗証番号を回収して、口座から現金を引き出し騙し取っていくのです。
誉田 そういうのはすべて、暴力団なり半グレ集団なりの仕業なんですか?
土井 たいてい半グレの連中ですが、中にはグループに属せず、手口を真似してやっている連中もいます。逆にヤクザ者は、オレオレ詐欺や窃盗に手を染めていることを表立って認めたがらないですね。組織の沽券に関わるとかで(笑)。
誉田 なるほど(笑)。そこは昔ながらの任俠道というか、プライドがあるんですね。
土井 それでもやっている奴もいましたけどね。中には政治結社の構成員がやっていた事案もありました。