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女子刑務所での刑務官も務めていた木下さん

誉田 これほどあちこちへ異動していると、行った先で昔の同僚と再会するようなこともありそうですね。

木下 それはよくありましたよ。というのも、わりとどこへでも自由に転勤できる人材というのは、ある程度限られているんです。たとえば結婚して子供もいる人は、その場所に残ることが多いです。

誉田 だから木下さんの場合は栃木刑務所4回も配属になるようなことが起こり得るわけですね。

木下 そうですね。そこでよく知っている職員と一緒に勤務していました。それに、女子刑務所はその地域で犯罪を犯した人がその地域の近くの刑務所に入ることが多いので知っている受刑者に会うことはよくありました。

誉田 待遇や環境の面で、男子刑務官と何か違いはあるものなんですか?

木下 私は女子専用施設ばかりだったので、基本的に男子刑務官が何をやっているのか、あまり知らないのですが、たとえば高等科研修などで男性の話を聞くと、やはり細かな違いはありそうでした。たとえば飲み会とか業務外の立ち回りで心象が左右されて、それが配置に影響したりなんてことは、女子ではまずあり得ません。

女子刑務官の離職率の高さ

誉田 それに、ライフステージごとの働き方の違いはやはりありそうですよね。

木下 そうですね。結婚して家庭を持ったらたいてい官舎を出ていきますし、そもそも育児に追われて仕事を続けられなくなる人だって少なくありません。女子刑務官の離職率の高さに関しては、よく男子刑務官から「ええ、毎年そんなに辞めるの?」とびっくりされました。時代も時代でしたから仕方のないことなんですけど、今もさほど事情は変わらないのではないでしょうか。

誉田 つまり世に言う働き方改革はあまり進められていない、と。

木下 それでも、今はいろいろと取り組んでいると思います。結婚後も夫婦共働きでやりやすいように配置を考慮したり、休みも取りやすくなっていると思います。もっとも、私の立場からすると、離職率の高さが咎とがめられること自体に違和感がありましたけど。

誉田 それはなぜですか?

木下 男の人からすると、女子ばかりの世界では陰湿ないじめがあってすぐ辞めていくのではないか、といった偏見があるんですよ。こういう誤解はあまり面白くないですね。

誉田 まあ、そうですよね(苦笑)。

木下 そもそも、女子刑務所は辺鄙な場所に多いんです。栃木刑務所にしても栃木市内にあるとはいえ、遊びに行くにも一苦労な不便な場所でしたし、仕事を続けたくても続けにくい事情はあったと思います。実際、札幌刑務所や和歌山刑務所みたいな都市部にある施設では、離職率が低かったように思います。

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