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 他方、最近のカレー店で出されるものには、2種盛りカレーや3種盛りもあり、盛りつけに個性が見られることが多い。より積極的に視覚から食欲を刺激する。この点もカレーの表現に加えたい。 

見た目で表現するカレーのおいしさ

 たとえば「黄色いターメリックライスの上に、牛すじの食感を残したビーフベースのサラッとした欧風のルゥ」(黒沢薫『ぽんカレー』)がかかっていたり、「白米を囲む色鮮やかなカレーと副菜全10品」(「dancyu 」2019年9月号)が銀色の皿の上に盛大に並んでいたりと、 ライスとカレー、そして副菜との色のコントラストが楽しい。本場インドでカレーを注文すれば「鮮やかな黄色のカレーがあった。赤っぽいカレーも黒っぽいカレーもあったし、普通の色のカレーにはパニールの白や野菜の緑が映えている」(竹内真『カレーライフ』)と見た目での感動と驚きが描かれる。パニールとはインドなどで作られるチーズのことだ。 

 札幌のスープカレーは、スパイスの浮いたサラサラのスープ状のルーに大きなチキンレッグ、 素揚げした色とりどりの野菜、ゆで卵、そして別皿に用意されたライスが典型の様子だ(「ブルータス」2020年7月1日号)。 

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 見たままの描写では物足りないと感じる場合は、何か別のものに見たてて表現する手法があるだろう。カレーの盛りつけはしばしば山に喩えられる。 

 皿に盛られたご飯の上に、艦長先輩はたっぷりとルーをかけ、さらにルーの上に少量の生クリームを垂らした。小麦粉のせいか、最初の日のスパイスカレーよりもとろみのある濃い色のルーに、その白色は、すそ野を大きく広げた山地がいただく新雪のごとくに映えた。 

 (乾ルカ『カレーなる逆襲!』) 

 池波正太郎は「ライスを、ヒマラヤの高峰のごとく皿の片隅へもりあげ、チキンカレーを、ライスの山腹の草原のごとくにみたす」(「カレーライス」)と描写する。また「カルデラのごとくドライカレーは山の上に鎮座、麓にはカレーソース」(「ブルータス」2020年7月1日号)などのように水面(みなも)を湛えるカレーも。 

 見た目で軽くおいしさのお膳立てをした次は、ルー自体にぐっと接近しよう。