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あなたはカレーを食べて「甘い」「辛い」以外の表現ができますか? 言葉の専門家たちが放つ“深すぎる”食レポを紹介

『おいしい味の表現術』より #1

note

 ルーの見た目 

 ルー自体のポイントは色合いと粘度。

  多くの人が思い浮かべる家庭のカレーは、茶色からこげ茶色のルーではないだろうか。いわゆる茶系の食べもの。華はないが、家のカレーにはどこか和ませる力がある。他方、カレー店のカレー、とくにスパイスカレーは、オレンジ色、赤茶色、茶色に、真っ黄色、やや緑を帯びた黄褐色、あるいはサグカレー(ほうれん草のカレー)だと緑色、さらには黒色のルーまでバラエティーに富む。 

 色を直接表現するだけではなく、「チョコレート色をしたカレー」「黄金のルー」のように、 ルーの色を何かに喩えると表現も広がる。 

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 では、ルーの粘度は? オノマトペの出番だ。家庭では市販のカレールーが使用されることが多いのでとろみがつく。作るカレーの粘度の好みによって、ドロッとした、どろりと、とろ っと、とろとろの、もったりした、と表す。 

 スパイスカレーは、シャバシャバ系の割合が高い(ただし、挽き肉[キーマ]を使用するキーマカレーは日本では汁けのないものが多い)。しゃばしゃば、パシャパシャ、シャブシャブの、さらさらの、さらさらと流れるような、さらっとした。東京の「新宿中村屋」と並ぶ老舗のインドカレー店「アジャンタ」(東京・麴町)のチキンカレーは「少し緑がかった黄色とも茶色ともつかないサラサラの汁」(浅野哲哉「衝撃のカリー体験」)と表現される。    

 カレーの見た目で食欲を刺激されたら、次は肝心の味に向かう。