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比喩のゆくえ 

 さらなる高みを目指すラーメン職人は、“食べてよし”だけでなく、“見てよし”も追究する。おしゃれな見た目を重視するものが増えた。

  グルメレポートの達人は、特上海鮮丼の見た目を「宝石箱」に喩えた。ラーメンはどうだろう。「真っ白な背脂の雪景色」と「山のようなもやし」をみよう。ラーメンにトッピングされている背脂の様を積雪に、大量のもやしを山に喩える。両者ともに自然に見たてる。 

 ラーメンの味を人に喩えたように、その見た目も人になぞらえることができる。たとえば、 「旨みたっぷりのスープにシルキーな細麺が寄り添う」や「青・白・赤の3色のネギが踊る」など。スープの中に麺がある様を人と人が寄り添うことに喩え、3種のネギが彩り豊かに盛られている状況を人の踊りに見たてる。 

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 このようなラーメンの〈見た目はX〉のXにはほかに何が入るだろうか。つけ麺に対して、次のようなコメントがある。「まるで会席料理! 食材・技術・センスの塊です」「色白で美しい麺、ほんのりピンク色のチャーシューなど官能的でセクシーな印象のある一杯」「まるで遊園地のような一杯」。3品ともすべて異なるラーメン店の料理で、つけ麺の見た目がそれぞれ会席料理・美女・遊園地に見たてられる。膳だての形式美・女性の魅力・様々なアトラクションからなる楽しさの観点が生きる。ラーメンの見た目も何らかの類似点を感じれば自由な発想でXを埋めるといいだろう。 

 この章では、ラーメンの味や見た目を表すことばを調査した。みんなに愛されるがゆえに、 極上のラーメンに出会えば、そのうまさや見ばえを他人に伝えたくなる。その結果、ラーメンの味ことばの交歓会がはじまる。 

引用文献 
・雁屋哲/花咲アキラ、2004年、『美味しんぼ』(88巻)、小学館
・講談社・編、2019年、『第20回業界最高権威 TRYラーメン大賞2019-2020』、1週間MOOK 
​・講談社・編、2020年、『第21回業界最高権威 TRYラーメン大賞2020-2021』、1週間MOOK 

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