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 その結果出来上がるジダンのチームは、実にナチュラルだ。ポゼッションもするし、カウンターもする。時には勝利を得るためモウリーニョのようにゴール前にバスを停めることだって厭わない。世界最高峰の選手たちゆえ、厳密な制約なしにプレーしても、ピッチで起こりうる状況についてはある程度対処出来てしまうのだ。そして、それこそがジダンのチームの最大の強みとなっている。

 ポゼッションでペップのチームにこそ勝てないかもしれないが、世界で3番目ぐらいには上手い。カウンターの鋭さはクロップのチームに劣るかもしれないが、こちらも世界で3番手ぐらいには付けているだろう。この全方位型の強さはとりわけ、欧州各国の強豪と一発勝負(ホーム&アウェイ)を繰り広げるCLで顕著に発揮されている。どこの国のどんなスタイルのクラブ相手にも、彼らはだいたい優位に立ててしまうからだ。固有の勝ちパターンがない代わりに、決まった負けパターンもない。研究出来ないという強みは、特に弱者側からすると最もアップセットを起こしにくい厄介な強者に映るだろう。

何でも出来るチームだけの戦略

 そのジダンのチームの強みがとりわけ発揮されたのが、まさに最後の最後、一発勝負で雌雄を決するCL決勝のような舞台である。ジダンのマドリーは15/16シーズンからこの大会を3連覇するという、前人未到の快挙を成し遂げた。

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 15/16シーズンのCL決勝はシメオネ率いるアトレティコとのマドリードダービーとなった。試合前の予想では、守らせたら欧州最強の盾を持つアトレティコをスター揃いの矛を持つマドリーがどのように攻略するか、と見られていた。しかし、いざ蓋を開けてみればジダンはポゼッションという「矛」を放棄。その代わりアトレティコにあえてボールを持たせて攻撃させることで、彼らの「盾」を捨てさせる戦略に打って出たのだ。つまり、お互いの強みをぶつけ合う構図ではなく、むしろ強み以外の部分でぶつかり合ったらどうなるか、という勝負を挑んだわけだ。

現役時代のジダン ©JMPA

 アトレティコは引いて守り、カウンターで攻めることを前提とした選手を集め、トレーニングを積んできたチームである。その分、ポゼッションはある程度捨ててきた。「特化」こそが彼らの強さの源であった。一方でマドリーは何にも特化させていない。しかし、その分、何も捨てていない。ポゼッションの方が得意かもしれないが、カウンターをさせても充分に強かった。結果はまんまと泥仕合に持ち込んだジダンの戦略勝ちである。