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ロス五輪の敗戦は“暗い兆候”だった

 表彰台に上がった日本選手は、銅メダルを首にかけられるとすぐに外した。

 優勝したのは米国を3-0で下した中国。中国は81年のワールドカップ、82年の世界選手権に続き、世界三冠を達成した。

 ロス五輪ではソ連やキューバ、あるいは東欧諸国など16カ国・地域がボイコット。バレー強豪国が出場しないため、日本に有利と謳われながらの銅は、それ以降の世界女子バレーの勢力図の変化を暗示していた。

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女子バレーの未来を憂いた小島孝治元監督 ©文藝春秋

 そして政治がスポーツに介入し、自分たちの努力ではどうにも出来ない理不尽さを味わった選手、スポーツ指導者らは、命のやり取りをするほど辛く厳しい練習に、疑問を抱くようになったとしても不思議ではない。自分の能力の一滴まで絞りだすような作業を続けてきても、大きな力で一瞬に無にされてしまう現実を目の当りにしてしまったからだ。

 モスクワ五輪に日本が不参加を決めたとき、当時の監督だった小島が漏らした「この決定が、後々スポーツ界に悪影響を及ぼさなければいいが……」という懸念は、徐々に露(あらわ)になってくる。