発達段階や心に問題を抱えた子供たちが増えている
ここまでをまとめると、眼前で起きた喧嘩を捌いたところで、根本原因は何ら解決できていないということになろう。地が固まりなどしないのだ。児童たちがなぜ抑鬱傾向に陥ってしまったのか、そこを解明し救済しなければ、暴力行為もその幼さも、自分勝手な態度も改まらないのだ。
30人クラスを想定してみよう。1人が重複してその行為をしている場合も多いだろうが、30人中8~9人が幼い発達段階、5~6人が善悪の判断がつかず落ち着きがない、4~5人が暴力行為や暴言を発するのが当たり前になってしまっているのだ。
この状況で平穏な心持ちで過ごし、人格を陶冶できる子はどれほどいるのだろうか。「自分とは違う種類の子がいるのだ」という認識を強めるだけではないのか。
20年前、筆者が小学校で講師をしていたとき、幼い発達段階の子こそ一クラスに5、6人在籍していたが、善悪の判断がつかず落ち着きがない子・暴力や暴言の傾向が強い子など1、2人しかいなかった。それでも、クラス運営や授業運営が難しくなってきたと言われたもので、教育界は一教室に教員2人体制で対応することをし始めたのだった。
さらに筆者が小学生だった1980年代は、前記に該当しそうな児童は120人の一学年あたりでも片手で数えられるほどだったように記憶している。もちろん教員は一教室に1人だった。それでも現在と比べて、指導が行き届いていなかったようには思えない。
一方、中高では、教員が教科担任制であること、生徒が親を客観視できるようになっていたり、生徒たちの精神が発達し毒に対する耐性がついていたりするので、この崩壊傾向は弱まる。
私が中学生の頃は、典型的な非行少年が学内で暴れることによって、教員たちが駆り出され、授業が自習になることがしばしばあった。本来あるべき授業など成立しない。流血事件も折々見られた。それでも、授業が壊れるだけで生徒たちの心理が壊れたというケースは少なかった。
暴力は中1が最多、「中1ギャップ」が背景に?
とはいえ、気になる数字がある。現在の中学校で暴力行為が発生する学年についてである。2020年の中学生の暴力行為は中1が9427件、中2が6923件、中3が4074件と、中1の件数が他学年を大きく引き離しているのである。
1970年代から80年代の校内暴力や家庭内暴力と言えば、14・5歳がボリュームゾーンだった(*3)。それが低年齢化しているのである。
*3 有元石太郎「教育崩潰の現状と教育革命の必要およびその理論と方法論V:中学校暴力問題の根本的解決案:中学生問題を全体的に捕えなくてはいけない」(1981)
また、暴力の対象も、かつては3割が教員に向かっていたが、現在は1割にまで減っている。増えているのは、生徒間のそれである。
「中1ギャップ」という言葉がこの10年、教育界に定着しつつある。これは小学校を卒業して中学校へ進学した際、これまでの小学校生活とは異なる新しい環境や生活スタイルなどになじめず、授業についていけなくなったり、不登校やいじめが起こったりする現象のことだとされる(*4)。
*4 新興出版社「中1ギャップって何? 対処法は?」(2022/1/15閲覧)