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連載日の丸女子バレー 東洋の魔女から眞鍋ジャパンまで

「『え? え?』みたいな判定が続き…」日本女子バレー初のメダルなし 中田久美が生涯忘れない“審判の顔”

日の丸女子バレー #22

2022/02/26
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 2012年のロンドン五輪で銅メダルに輝いた女子バレーボール日本代表。その監督を務めた眞鍋政義氏(58)が、2016年以来、5年ぶりに日本代表監督に復帰することが決まった。2012年10月22日、眞鍋氏はオンライン会見でこう述べた。

「東京オリンピックで10位という成績にかなりの危機感を抱いている。もし(2024年の)パリ大会に出場できなかったら、バレーボールがマイナーなスポーツになる“緊急事態”であるということで手を挙げさせていただいた」

 女子バレーは2021年の東京五輪で、“初の五輪女性監督”中田久美氏(56)が指揮を執ったが、結果は25年ぶりの予選ラウンド敗退。1勝4敗で全12チーム中、10位に終わった。

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 正式種目となった1964年の東京五輪で、記念すべき最初の金メダルに輝き、「東洋の魔女」と呼ばれた日本女子バレー。だが、その道のりは平坦ではなかった。半世紀に及ぶ女子バレーの激闘の歴史を、歴代選手や監督の肉声をもとに描いたスポーツノンフィクション『日の丸女子バレー』(吉井妙子著・2013年刊)を順次公開する。(全44回の22回。肩書、年齢等は発売当時のまま)

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“因縁の相手”ソ連との激闘

 ソウル五輪の初戦はいきなりソ連が相手だった。かつての世界二強は一歩も引かず、2−2でフルセットを迎えた。5セット目も8回のマッチポイントを繰り返す一進一退の闘いが続く。

 2時間を超える激しい攻防に終止符を打ったのは、真っ暗闇の体育館で枕を並べて寝ながら、仲間の存在を信じ合った日本だった。

 だが次の試合で伏兵の東ドイツに負けた日本は、予選リーグ最終戦の韓国に勝たないと決勝トーナメントに進めない状況となった。これは韓国も同じ条件だった。

2021年、自身も代表監督として五輪を戦った中田久美氏 ©文藝春秋

 韓国が決勝トーナメントに駒を進めるかどうかの試合で、しかも相手が日本だったことから、会場には耳をつんざくような応援が響きわたる。しかし、1セット目は会場のブーイングに惑わされ落としたものの、反日感情が渦巻く会場の喧騒は想定内。落ち着きを取り戻した日本は2セット目から立て続けに奪い、3−1で韓国を下し準決勝進出を決めた。

 準決勝の相手はB組全勝で勝ち上がってきたペルー。急速に力をつけてきたチームとはいえ、日本はロス五輪ではペルーを下して銅メダルを獲得している。金か銀はすぐ目の前にあった。