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「“実家を出よう”と思ったことはなかった」アルコール依存症の父と同居…“毒親”でも家に残った理由

source : 提携メディア

genre : エンタメ, 読書, 社会, 人生相談

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それまでは、父がアルコール依存症だと思ったことはなく、漫画を発表した後も半信半疑だった。しかし、読者から届く感想を読み、自分の経験を省みることになる。

「感想の中には、私と同じような経験をした方の話もたくさんあって、みんな大変そうだなって思ったんですよね。そう思ったということは、私も大変な思いをしていたんだって気づいたんです。たまたま行った場所でたまたま聞いた話をきっかけに、自分の経験を発表することになって、後になって自分の家が異常だったことを実感していきました」

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父と一緒に生活していた頃、「家を出よう」と思ったことはない。その理由は、家庭という環境に順応するしかない子どもだったから。

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「中学生の頃から、親子関係が逆転していたんです。酔っぱらった父は子どもみたいで、面倒を見ている私がいなくなったらこの人は生活できないって思い込んでいました。その状況が当たり前だから、家の外の平穏な世界に身を置くより、明日何が起こるかわからない父との暮らしの中でじっとしてる方がしっくりきていたんです」

そうした思いから、菊池さんは父の最期を看取るまでの約40年間、一緒に生活をした。

もし、当時の自分に会えたら、まず伝えたいのはアルコール依存症という病気のこと。

「当時の自分にアルコール依存症の知識があったら、状況は違ったと思います。父を動かせなくても、依存症の家族を抱える人が集まる会に参加して、同じ経験をしている人と思いを共有し、自分がラクになる道もあったのかなって。あと、もう1つ伝えたいのは、『悪いのは子どもじゃないからね』ってことです」

「人間不信」から抜け出すための一歩は「人と触れ合うこと」

ひと口に毒親といっても、その実態はさまざま。暴力を振るう親だけでなく、過干渉になって支配する親もいれば育児放棄をする親もいる。

「どんな接し方であっても、共通するのは『子どもを1人の人間として扱わない』というところだと思います。そして、子どもが1人で生きていこうとした時に、良しとしないところも毒親の特徴なのかなと、いろんな方に話を聞く中で思いました」