『酔うと化け物になる父がつらい』の刊行以降、親に苦しめられた人たちへのインタビューを続けてきた菊池さん。その中で、子ども自身が受ける影響にも共通するものがあるという。
「毒親の影響は人生全般に及ぶと思っていて、中でもみんなが陥るのが人間不信。何度も親に約束を破られる生活の中で、人間は信じられないということを学ぶんです。周りにいる大人も助けてくれないとなると、ますます人が信じられなくなる。そうなると友達もパートナーも作れないし、職場でもうまくいかない。生きていくのがとても大変なんですよね」
菊池さんのようにその状況から抜け出し、仲間を作って活躍している人もいる。そのきっかけはどこにあるのだろうか。
「人との接点を広げることでしょうか。他愛もない会話ができる人が増えていくと、自分のことを嫌わずに信じてくれる人がいることを知って、ちょっとずつ傷が癒えるというか、強くなれるんですよね。人間不信という感情もだんだん薄れていくから、まずは同じ経験をした人の集まりでもいいので、接点を増やすことが大切だと思います」
さらに、人と話す機会を増やしていくと、自分の家庭が当たり前ではなかったことを実感できる。
「私の家がおかしかったと気づけたのは、漫画の感想を読んだりインタビューをしたりして、いろんな家庭の話を聞けたから。1~2回じゃなくて、シャワーを浴びるようにいろんな人の経験に触れた時に、やっと自分はどうだったか振り返れると思ったんです。ㇵッと目覚めさせてくれるような魔法のひと言はないし、きっかけがどこに落ちているかわからないので、とにかくいろんな話を聞くこと。今回の記事も、誰かにとってのきっかけの1つになったらいいなって思います」
周囲の人は「家を出ること」を無理強いせずに見守ってほしい
今は「親との生活が苦しいなら、距離は取れるだけ取った方がいい」と伝えている。ただ、全員が家を出られるわけではないこともわかっている。