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「親と縁を切るって難しいですよね。学生だから家を出られない人もいるし、親の介護で呼び戻されることもあるかもしれない。物理的に距離を置いたとしても、苦しさが終わるわけではない場合もあります。もちろん物理的に距離を取れる人は取った方がいいけど、心の距離を離すことも考えてみてほしいです」

菊池さんがカウンセリングで通っていた臨床心理士の信田さよ子さんが、講演会でこう話していたそう。「親と同じ家で暮らさなきゃいけない人は、まず敬語で挨拶してみましょう」と。

「親に『おはようございます』『いってらっしゃいませ』と敬語を使うだけで、心の距離が取れるそうです。私は父とべったりくっついてしまったから、父が酔っ払っていると怒りや悲しみの感情に引っ張られてしまったんです。もし、『そんなに酔っぱらって大丈夫ですか?』と距離を取り、他人事として眺めることができたら、心の平穏は保たれたんじゃないかな。親に悩まされている人には、きっと有効な方法だと思います」

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周りの友人やパートナーが家族のことで悩んでいると感じた時、「『一度家を出てみたら?』とは言わないであげてほしい」と、菊池さんは訴える。

「本人も逃げた方がいいことはわかっているけど、できないから苦しんでいるんだと思います。その状態で『家を出なよ』と言われると責められているように感じて、相談しにくくなるので、周りの人は『家を出るって方法もあるんじゃない?』と情報を与える感覚で見守ってあげましょう。本人の考えを否定せずに、応援してください」

漫画家・菊池真理子さん

菊池さんが伝えていることは、さまざまな人との会話、触れ合いの中から得た知識や気づきがもとになっている。そして、今後もそのつながりを広げていきたいと考えているそう。

「私の経験は、同じ体験をした人にしか理解できないことだと思っていました。でも、自分とはまったく違う環境で愛されて育った人たちと接した時に、互いの話をちゃんとすれば受け入れ合えることを知ったんです。材料を出し合って仲良くすれば、知識が増えて、不用意な言動で誰かを傷つけることも減るんですよね。だから、今は同じ経験をした人と同じくらい、違う経験をした人と話す場も大事だなって思っています」