芸人がテレビに出たくない?
「なんでテレビに出ようとしないんだ?」
「僕たちはライブを中心にして、いいコントを作っていきたいんです」
「お前らさ~、なんのために、この世界に入ってきたんだよ。有名になるためじゃないのか?」
「……」
「確かに、ライブにこだわる気持ちは分かるけど、テレビに出て名前が売れれば、ライブにもお客さんがどんどん来るし、さらに売れるじゃないか!」
「いや、僕たちは~、テレビに向いていないから、あんまり出たくないんですよね~」
「えーっ!? 芸人がテレビに出たくないなんて、俺には理解できないよ……」
まさに“コント職人”と呼ばれ、毎年のように単独ライブを開催して、新しい笑いを追求しているバナナマンらしいが、今では、そんな二人がテレビで活躍を続けているのも面白い話だ。
まあ、出たくないと言いつつも、断り切れないテレビ出演もあるわけで、少しづつ経験していくうちに、彼らなりに、自分の立ち位置やキャラクターなどを身につけていったのだろう。
たとえば、設楽が、
「日村さんは、オットセイに似てるんですよ~」
と振ると、日村がマネをして笑いを取る。そんなふうに、設楽が振って、日村が落とすというパターンができて、自信がついたのかもしれない。
特に設楽は、現在、朝の情報番組『ノンストップ!』(フジテレビ系)の司会として、平日は毎日出演しているし、調査会社が発表した「2021年テレビ番組出演本数ランキング」では1位になったという。
いったい、あのときのテレビうんぬんのやりとりはなんだったのだろうか……。
でもまあ、まがりなりにも、俺の付き人だった二人がコンビを組み、ここまで超売れっ子になったことは、本当にうれしい限りだ。
それもこれも、独自の信念や世界観を持ち、頑なに貫いてきたからこそ、たどりついた領域と言っていいだろう。