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「設楽統は貯めたお釣りでちゃっかり革ジャンを…」コンビを付き人として雇っていた渡辺正行が語る“バナナマン結成前夜”

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『関東芸人のリーダー お笑いスター131人を見てきた男』より #2

2022/03/13
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コンビ解散、日村は大号泣…

 のちに聞いた話によると、ちょうど俺がダイエットをしていた頃で、蕎麦ばかり食べていたらしい。

 そして、日村が言うには、

「だから、僕らもいつも蕎麦しか食べられなくて……。でも、付き人を卒業する日に、すき焼きをごちそうになったんですよ。それが印象に残ってます」

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バナナマン日村勇紀さん(テレビ東京公式HPより)

 いやはや、俺の威厳のためにも、最後の最後で、すき焼きを食べさせておいてよかった。

 陸上部は次第に人気を集め、テレビ番組にも出演できるようになった。まさに順調な滑り出しであり、「なべや」としてもありがたいことだった。

 ところが、わずか1年くらいで、陸上部は解散してしまったのだ。

 解散を求めたのは日村の相方だった。交際相手がタレントと付き合うことを望んでいないため、これ以上売れて、世間に認知される前に辞めたいというのが理由である。

「お前はそれでいいのか?」

 日村に率直な気持ちをたずねてみても、

「相方がそうしたいなら、それでいいんです」

 と淡々と答えたため、俺としては認めることしかできなかった。

 ただ、実は、解散の話を告げられた日、日村は実家の自分の部屋で大声で号泣し続けたらしい。

 すると、両親がやってきて、

「いつまでも泣いてるんじゃない! 男だったら、自分で決めたことを10年はやりなさい!」

 などと言われたという。つまり、そのまま芸人を続けることに反対するどころか、応援してくれたのである。

 そこで腹を決めた日村は、その後、一人で活動することになるのだが、ピン芸人としての仕事はほとんどなかった。たまにテレビ番組の再現VTRに出演したり、アニメの声優などをしたりしながら、新しい相方を探す日々を送っていた。

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