1ページ目から読む
2/5ページ目
コンビ解散、日村は大号泣…
のちに聞いた話によると、ちょうど俺がダイエットをしていた頃で、蕎麦ばかり食べていたらしい。
そして、日村が言うには、
「だから、僕らもいつも蕎麦しか食べられなくて……。でも、付き人を卒業する日に、すき焼きをごちそうになったんですよ。それが印象に残ってます」
いやはや、俺の威厳のためにも、最後の最後で、すき焼きを食べさせておいてよかった。
陸上部は次第に人気を集め、テレビ番組にも出演できるようになった。まさに順調な滑り出しであり、「なべや」としてもありがたいことだった。
ところが、わずか1年くらいで、陸上部は解散してしまったのだ。
解散を求めたのは日村の相方だった。交際相手がタレントと付き合うことを望んでいないため、これ以上売れて、世間に認知される前に辞めたいというのが理由である。
「お前はそれでいいのか?」
日村に率直な気持ちをたずねてみても、
「相方がそうしたいなら、それでいいんです」
と淡々と答えたため、俺としては認めることしかできなかった。
ただ、実は、解散の話を告げられた日、日村は実家の自分の部屋で大声で号泣し続けたらしい。
すると、両親がやってきて、
「いつまでも泣いてるんじゃない! 男だったら、自分で決めたことを10年はやりなさい!」
などと言われたという。つまり、そのまま芸人を続けることに反対するどころか、応援してくれたのである。
そこで腹を決めた日村は、その後、一人で活動することになるのだが、ピン芸人としての仕事はほとんどなかった。たまにテレビ番組の再現VTRに出演したり、アニメの声優などをしたりしながら、新しい相方を探す日々を送っていた。