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設楽は貯めたお釣りでこっそり革ジャンを…

 一方、日村より1歳下の設楽は、92年春に高校を卒業した後、西武鉄道に就職し、駅員になった。しかし、お笑いの世界に対する憧れが強かったため、約半年で退職し、しばらくアルバイトをしていた。

 そうした中、石井社長が俺の運転手を募集しているときに、設楽を紹介され、付き人兼運転手になった。

 設楽は、テレビやラジオなどからも伝わるように、実に飄々とした雰囲気を持つ男である。それは、運転手を任せた初日からすでに感じられた。

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「ノンストップ!」番組公式Instagramより

 当時、俺はセドリックのリムジンに乗っていた。もともとは“邦ちゃん”こと山田邦子が、延長改造費も含め、かなり高額で購入した高級車なのだが、酒の席で値切りまくり、たった100万円で譲ってもらったのだ。

 普通の自動車よりも車体の長さが違うため、設楽には事前に「お前、気をつけて運転してくれよ」と伝えていた。

 本人も「は~い、分かりました~」などと答えていたのだが、運転初日、俺を迎えに来る前に、あっさり車の横っ腹をへこませてしまったのだ。

「いやあ、リーダー、すみません。車体が長くて、なんか曲がる感じが違うんですよね~。それでぶつけちゃって~」

 これが謝罪の弁なのだが、あまりにも飄々としていたため、脱力するしかなく、怒りの感情も沸かなかった。

 ただ、思えば、設楽には、仕事以外の運転も任せるなど、ずいぶん申し訳ないことをしている。なにしろ、ゴルフ場やデートの場所への送り迎えをさせたり、そのまま待たせたりしていたのだから。

 当時の俺のすべてを知っているから、いろいろバラされたらたまったもんじゃない。そういう意味では、今も頭があがらない。

 設楽は、付き人兼運転手をしていた1年間、俺がジュースやタバコなどを買いに行かせたとき、おつりは返さなくていいというルールを勝手に作っていた。そして、俺の知らないうちに、その貯めた金でちゃっかり革ジャンを買ったようだ。

 そのことを知ったときは驚いたが、それを差し引いても、やはり設楽から何を言われても、文句は言えない。しかも、笑えるエピソードだし、いいね!

 そんな設楽と日村が、まさかコンビを組んで超売れっ子芸人になるとは、その時点では想像もつかなかったのは言うまでもない。