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関心分野が「英語音声学」に

「オーストラリアから戻ってきて、日本の学校で英語の授業を受けた時、オージーイングリッシュと発音が違うことにも興奮しました。メロディーとして考えると、音が違うんです。音の高低差が違うといいますか」

 書店では英語の本を買い集めた。中でも『ナマった英語のリスニング』(中谷美佐、森川尋美著)は、各国の英語の発音が収録されており、ぼろぼろになるまで読み返した。イギリスが舞台となった映画を観ると、音の違いに敏感に反応した。

「上流階級や労働者階級で発音が異なっているのに興奮しました。どこまで細分化されているんだろうかと。『ラブ・アクチュアリー』という映画の台詞集を買って、途中まで丸暗記したこともあります」

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 そんな英語漬けの中学生活を送り、高校は国際教育が充実している立命館慶祥高校(北海道江別市)へ。1年生の時点で英検準1級に合格するという、極めて高い英語力をすでに身に着けていた。そしてその頃には、関心分野が英語音声学に広がっていた。

英語の発音にこだわって香港留学

 高校卒業後は、大分県にある立命館アジア太平洋大学(APU)へ内部入学した。英語力を証明する外国人枠の進学で、日本育ちの生徒としては珍しいケースだったという。しかも外国人留学生が半数という国際色豊かな大学で、色んな英語に触れられる環境に、だいじろーはある試みを始めた。

 

「全部で100カ国ぐらいから留学生が集まっていました。そこで全員の発音を集めようと思って、各国の留学生にインタビューをしました。100カ国集めれば面白い研究になるかなと。自分しか喜ばないかもしれませんが……(笑)。結局、10人ぐらいで頓挫しました」

 2年生の秋からは、香港とフィンランドの大学に計1年間留学する。特に香港を選んだ理由は、発音が絡んでいた。

「みんなアメリカやカナダなどの英語圏に留学していましたが、英米の英語はこれまで散々聞いてきました。ところが香港の英語はあまりネットにアップされていなかったので、下心として香港の英語を耳にしたいなと。フィンランドは誰も行っていなかったので、何となくランダムに決めました」

 留学を終えて大学3年生の秋に帰国すると、就職活動が待っていた。だが、あまり前向きに取り組めなかった。日本の企業にはどこか体育会系のイメージが染み付いていたのと、やはり海外で働くことへの憧れがあったからだ。