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新たなビジネスモデル

 軽井沢国際カーリング選手権大会は1998年の長野五輪開催を記念して、翌1999年からはじまった伝統ある大会で、これまでの歴史で数えきれない好ゲームを生み、地元出身の名選手を育んできた。日本のカーリングの発展には欠かせない存在だ。近年こそ新型コロナウイルスの影響で開催できていないが、世界のトップ選手を呼べる国際大会に成長している。

 札幌では2015年から、どうぎんカーリングスタジアムにて「どうぎんカーリングクラシック」が新設された。こちらもワールドツアーに組み込まれた大会で、アジアやカナダのチームを中心に国際大会としての地歩を固めている。

 特筆すべきはその企画力だ。大会スポンサーと連携してパーティーを開き、マグロの解体ショーを行うなど、国内外のゲストを北海道の幸でもてなした。

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マグロ解体ショーと握り寿司は、特に海外選手に喜ばれた ©竹田聡一郎

 ホールでは試合を実況解説つきで配信し、時には小笠原歩や石崎琴美、吉田知那美らが解説者として登場するゲームもあった。豪華なキャスティングができたのは、主管の札幌カーリング協会の尽力であろう。

 また今季は、同大会のプロモーション動画として吉村紗也香×藤澤五月をはじめ、北海道銀行フォルティウスとロコ・ソラーレの同ポジション対談などをYouTubeの「どうぎんカーリングクラシック」チャンネルで配信するなど、カーリングならではの展開に成功している。吉村×藤澤の動画は、公開から半年が過ぎ、2月末までに70万再生に迫る勢いだ。新たなビジネスモデルの提示につながるのではないか。

確実に上がったファンの“観戦力”

 その2019年のどうぎんクラシックには、カナダのトップ選手のひとりであるジェイソン・ガンラグソンが来日し、入場を待つ観客が作った行列を見て「日本でもこんなにカーリングが人気で嬉しいよ」と話していた。同じ年の軽井沢国際では、ニクラス・エディンが自分たちのプレーにも大きな歓声をあげる軽井沢のオーディエンスに「熱狂的なファンがたくさんいて、カナダでプレーしているような雰囲気だった」とコメントを残している。

 派手なテイクアウトは当然、精緻なドロー、激しいスイープにも惜しみない拍手を送る日本のファンに、世界のトップ選手がそれぞれ驚いてくれたようにファンや視聴者の質は確実に上がっているだろう。

2019年の日本選手権。チケットが転売されるほどの人気コンテンツに ©竹田聡一郎

 個人的な話になってしまって恐縮だが、2021年にロコ・ソラーレのインタビュー記事を書いた際、選手の結婚観やプライベートについての言及に文字数を割くと、読者から「それよりも、カーリングのことをもっと聞いてほしい」という反応も多かった。アイドル的な扱いよりもアスリートとしての情報を求めているファンが増えたことは、メディアとして反省、考慮すべき点である反面、カーリング界の嬉しい進歩として受け取れた。