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 それこそ、リモートで充分だ。MCの千鳥さんと、モデルさんなどの女性ゲスト、そして安心してトークを任せられる何人かの中堅芸人をリモートで繫げば、充分最高な番組になる。何しろ素材はもうあるし、売れっ子千鳥の看板番組『テレビ千鳥』。何の心配もない。

 だが、収録はなぜかテレビ朝日の屋上で行われた。ソーシャルディスタンスと換気という大義名分のもとで。

 しかも、スタッフの数もお天道様の下、深夜のバラエティ(当時は深夜放送)とは思えないくらい、たくさんいた。逆に出演者は千鳥のお二人、麒麟の川島明さん、狩野英孝くん、そして僕だけだった。

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 雲ひとつない青空が広がり鳥の囀りが聞こえるなか、32インチくらいのモニターに流れるVTRを観ながら、『テレビ千鳥』を5人で振り返る。そんな一見シュールにも思える光景に、僕はテレビ千鳥のプロデューサー・加地倫三さんの並々ならぬテレビ愛とバラエティ愛を感じた。

リモートでは絶対に生まれないもの

 加地さんといえばテレビ朝日の名物敏腕プロデューサー。『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』をはじめ、テレ朝の看板番組をいくつも手掛けている。

加地倫三氏 ©文藝春秋

 僕も加地さん演出の番組に何度か出させてもらっているが、加地さんが仕切っている番組はどれも、編集が本当にエグい。いい意味で、エグい。

 というのは、どんなに収録現場でスベったとしても、オンエアではとても面白くなっている。また、台本通りにやれば、ほぼ完璧な流れになるように仕上がっている。それだけ沢山の時間と多くの脳みそとこだわりが台本には詰まっていて、盤石の体制がすでに整えられている。

 だが、芸人が何人か集まれば必ず不協和音が生まれるものだ。わざと不協和音を鳴らそうとする人もいる。有吉さんやザキヤマ(アンタッチャブル・山崎弘也)さんは、「壊して創る」天才だと思う。その耳慣れない音に若手がもがき、台本を超える展開が生まれ、誰も想像しなかった結果に結びついたのを、今まで何度も何度も見た。

 それが、リモートで生まれるか? 僕は絶対に生まれないと思う。

重圧とキャスティング

 編集して放送されるから分からないかもしれないが、台本にはないことを言いたいと拳を握る若手芸人の鼻息と、その空気が周りにもたらす影響。そんなリアルな熱や言葉たちの積み重ねがあるからこそ、『アメトーーク!』や『ロンハー』は世代を超えて愛される長寿番組になったのだろう。

 だから、『テレビ千鳥』のDVD発売スペシャルはわざわざ屋外で、リモートではなく実際に芸人が顔と顔を見られ、互いの空気を感じられる状態で収録したんだと思う。