精子ドナーの赤ちゃんの頃の写真も、肉声も紹介
そこでたとえばカーソンさんをクリックしてみると、実はカーソンというのは仮名だとわかるが、そんなことはどうでもいいと思えるくらい詳細なプロフィールが出てくる。身長は179センチ、目の色はブルーグリーン、血液型はA型、筋肉質タイプというだけでなく、心の知能指数(EQ)、赤ちゃんの頃の写真、本人の肉声による自己紹介、クリオスのサイトを訪れた女性たちに向けた「あなたらしく生きて。人生は一度きり」という自筆のメッセージまで公開している(カーソンさんは達筆ではないということもわかる)。
カーソンさんはメガネをかけていて、母国語のデンマーク語以外にドイツ語と英語が話せて、酒は飲むがタバコは吸わない。睡眠は7時間だ。生年月日は明かされていないものの父親は61歳、母親は53歳、26歳と22歳の兄弟がいるので、年齢はだいたい類推できる。父方の祖父母も母方の祖父母も健在で、長生きの家系のようだ。
「彼は英国の俳優、ダニエル・ラドクリフに似ています」
それだけでなく、クリオスのスタッフから見たドナーの印象も添えられている。
「カーソンは親切でフレンドリーな若者です。彼は英国の俳優、ダニエル・ラドクリフ(編集部註:「ハリー・ポッター」シリーズの主役を演じたことで有名)に似ています。自分たちだけでは妊娠できない友人が身近にいたことから、ドナーになることを決めたそうです。ずっと警察官になりたいという夢を持っていますが、彼がその一途で強い意志とともに警察学校で華麗にやり遂げることを確信しています」
一番高価な精子は高学歴でもイケメンでもなく……
精子の価格は100ユーロ(約1万3000円)もしないものから1640ユーロ(約21万8000円)のものまでかなりの幅があり、高学歴やイケメン、ステータスのある男性の精子が高いのかというと、実はそんなことはない。今回、来日したショウ氏が日本の産婦人科医たちとの意見交換会に出席した際も、日本の医師たちからは価格や価格の根拠に質問が集中したという。
今まで精子バンクの内情としてたびたび取り上げられてきたのは、「ハーバード大卒、金髪、碧眼、運動神経抜群」の精子が〇〇ドル!といった「デザイナーベビー」的な発想の話題だった。しかし、現実はもっとクールで、かつ生々しい。
ショウ氏によると、値段の決め手は「ドナー」ではなく「精子そのもの」のクオリティなのだ。精子のクオリティとはズバリ、凍結した精子の解凍後の「運動率」である。それをクリオスでは独自に「MOT(motility/運動性)」という単位で表している。解凍後の運動率が50%以上の精子はMOT50+、40%台はMOT40、30%台はMOT30……MOTは、いわば精子の偏差値だ。
21万8000円もする「最高級精子」はMOT50+の高偏差値精子で、MOT40、30、20、10、5と偏差値が低くなるにつれて値段もどんどん下がっていく。そしてMOTを掲載していないドナーの精子が最も安い。