ウクライナ問題を日本人も“我が事”として捉えてほしい
これらの技法は、かねてイギリスのEU離脱に関する国民投票で起きた「BREXIT」や、当初苦戦すると思われたトランプさんを大統領選勝利に導いたケンブリッジ・アナリティカ社のモデル計算や理論も下敷きになっているものです。おそらくは、英語圏だけでなく日本語圏も、今回の露宇紛争を契機として多くのディスインフォメーションがネット上に流れ、それを真に受けた日本の報道機関によってソースロンダリングされて、一連のウクライナ問題に詳しくない日本人にそれなりに正しそうな報道・記事として受け止められて定着してしまう怖れもあります。
今後の問題として、いまウクライナ問題でロシア側に対して痛烈に批判をしている知識人が、紛争が終わってからそれなりの期間をかけて中傷や挑発をされたり、場合によってはあまり良くない事件に巻き込まれたりする可能性はあります。物理的に弾やミサイルを撃ち込んでドンパチすることだけが戦争ではない、むしろそういうハードなぶつかり合いよりも、長い時間をかけてお互いに浸透し合ったり、影響力を排除したりしながら、相手の国民感情とそれに立脚した政府の意志決定に介入しようとするのが、現代の実弾なき戦争の実際ではないかと思います。
最後になりますが、ロシアとウクライナの紛争については、これ以上の戦火が拡大することなくより穏便な形で停戦・講和が成立することを祈念してやみません。また、この問題を日本人も“我が事”として捉え、日本や周辺国など日本にとって大事な国や地域の人たちの安寧に資する議論が、国民の総意として積み重ねられることを願っています。
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