中国は得られる果実以上のリスクを負うのでは
SWIFT排除の抜け道として、中華人民元による独自の決済ネットワークCIPSを使う方法があるばかりか、仮にロシアの資源輸出が今回の国際的協調によって全面的に阻止されてしまうとしても中国が一定量以上を買い取る取引を進めることでロシアの活動を中国が支援する動きもできなくもありません。もっとも、ロシアはここまで大々的に既存の秩序を脅かすウクライナ侵攻を理由なく行ったことで各国激おこのところ、中国が漁夫の利を狙って堂々と参入してくるというのは中国にとっても得られる果実以上のリスクはあるのかなあとも思います。
イランの場合は、中国もマレーシアなどもある意味で堂々とSWIFT排除に対抗していましたけれども、経済力という点では貿易額がイランの8倍ぐらいあるロシアも同じようにできるかはまだ謎です。
さらに、同じくSWIFT排除の経験があるのは皆さんご存じ北朝鮮(2017年)です。ただでさえ貧しい北朝鮮が、外貨を稼ぐための輸出で金融システムを使えなくなって、短期的にはやはり経済に大打撃を受けた事例でしたが、中国、ロシアと国境を接する豆満江貿易で凌ぐばかりか、マネーロンダリングとインターネットハッキングを駆使して、本格的な犯罪行為に手を染めることでSWIFT排除によるショックを脱した経緯もあります。
ウクライナでの騒動が日本にとって他人事ではない2つの理由
これらのウクライナ支援の動きにおいて国際的な協調が叫ばれる中、これといった存在感を示すことのなかった日本にもお声がかかり、エネルギー問題を抱える欧州へのLNG融通だけでなく、SWIFT排除とプーチン大統領以下ロシア人政府高官や軍関係者などの在日本資産の一部凍結にも名乗りを挙げることになりました。
われらが大将である総理大臣・岸田文雄さんがもぞもぞ言っているのでなんか迫力がないのは残念ですが、私たちから地理的には遠いウクライナでの騒動が、日本にとって他人事ではない理由は大きく分けて2つあります。ひとつは「そうは言っても、当事国であるロシアは日本の隣国であるよね」という点。もうひとつは「今後、台湾海峡や南シナ海で中国関連の有事があるとき、日本が主導して国際的な制裁の枠組みを作らなければならない事態も想定しうる」という点であります。本当は、本格的にウクライナが敗勢になったならば、日本は率先してウクライナからの戦争避難民の亡命を受け入れるべきなのですが、現状では官邸でも国会でもあまりそういう議論になっていないのはちょっと残念です。