日本では海外要人たちの資産状況監視の仕組みやリストが作れていない
ウクライナ問題において日本がいますぐできること、それも実効性のあることは限られているのですが、ロシアはまさに我が国の隣国であるだけでなく、領土問題を抱えた相手国であることをそもそも忘れてはいけません。
また、ウクライナと日本の共通点は、軍事的に優勢である隣国からの脅威に晒されており、これへの対処を行うにあたり、国際世論の形成から、制裁に対する各国の支援の取り付けまで、より高いレベルで行わなければならない当事者になる恐れがあります。これは、例えば「台湾海峡で何かありましたよ」という事態になったとき、まさにシーレーンにおけるステークホルダーであり、平和による繁栄を享受してきた日本が是が非でも行わなければならないことのひとつでもあります。
しかしながら、ロシアに対するSWIFT排除そのものが、中国を中心とした脱ドル経済圏への拍車がかかることの問題もさることながら、日本固有の問題として、我が国はFATF勧告において重点フォローアップ国であり、要するに日本はマネーロンダリング対策において不十分な落第国だという扱いになっていることは、よく考えなければなりません。
特に、今回SWIFT排除と絡んでロシアの政府高官や軍関係者の資産凍結もお題目に上がるのですが、日本国内では海外PEPsと言われる海外政府の主要な人たちの資産状況を監視するための仕組みやリストが作れておらず、ロシアがSWIFT排除対策で強烈なマネロンをやろうとしたとき、日本もまた重要な蛇口になる危険性は相応に高いと考えて対策を取らざるを得なくなります。
ロシアの作戦であるディスインフォメーション問題も
この手の話題は、今国会でもマネロン対策のための犯罪収益移転防止法ほか関連法規の改正を見込んで手当しようとしてきたところだったのですが、文春砲が直撃した藤井敏彦さん、國分俊史さん、経済安全保障を主導しようとした甘利明さん方面の問題が起きた割に政権の目玉である経済安保関連法を優先したため、次期国会以降に持ち越しになってしまいました。諸外国では、海外PEPsだけでなく、国内の政治家や官僚本人や親族、秘書など関係者の口座を管理する国内PEPsも行って贈収賄(事後収賄を含む)対策を打ったりしているのですが、日本はこれへの対応が露宇紛争に間に合わなかったというのは大変残念なことです。
マネロン監視「共同化」へ 金融庁、法改正視野に: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB136T90T10C21A9000000
これらの制裁の動きと合わせて、いまロシアが英語圏を中心に展開している作戦に、いわゆるディスインフォメーション(フェイクニュース)問題があります。