文春オンライン
「それ、誰が欲しがるの?」青山の246号線でテールランプを追った日々から25年…「グランツーリスモ7」の現在地

「それ、誰が欲しがるの?」青山の246号線でテールランプを追った日々から25年…「グランツーリスモ7」の現在地

2022/03/05

genre : エンタメ, 娯楽

note

得られない自動車会社の協力、“246”を実際に走らせてテールランプを追う日々

 諦めない山内さんは、別のレースゲームを出して実績を積んだ後、満を持して初代「グランツーリスモ」の開発に着手します。しかし、最初は無名のためか、自動車メーカーの積極的な協力が得られたとは言い難かったようです。

 たとえば、ある車種のブレーキランプの位置を確認するために自動車会社にリクエストをしますが、思うような資料が出てきません。開発チームは、夜な夜な、東京・青山の前にあった国道246号線で実際に車を走らせて、ブレーキランプの点灯位置をメモして対応していきました。

 そんな苦労の末に発売された初代「グランツーリスモ」は、ゲーム中で実写に近い運転ができるというコンセプトが市場に受けて人気シリーズへと成長。次第に自動車会社からの協力も得られるようになり、ブランドとしての価値が確立されていきました。

ADVERTISEMENT

 

 私自身、そのブランド力を実感した思い出があります。

 2001年に発売された「グランツーリスモ3」(PS2)で、自動車メーカーの各広報担当に「グランツーリスモってゲームを知っていますか?」と尋ねたときのこと。質問した全員が認知しているばかりか、ゲームの出来栄えに“太鼓判”を押すと共に、実際の自動車の販促ツールとしての期待をかける発言をする広報マンもいました。

 リアルを追求する姿勢はその頃から時代の最先端を行っており、それほどの期待を集める出来になっていたのです。

 

初心者がゲームで困る「2つのポイント」を乗り越える工夫

 最新作の「グランツーリスモ7」は、さまざまな施設がある「カーライフを楽しめるリゾート地」で、自動車を購入。さまざまなレースに参加して、所有車を増やしていくというのが大きな流れです。

 まず日本の3台のコンパクトカーを集めて、次はライセンステストに挑んで基本の運転テクニックを習得する……という具合に、達成するべき “お題”が出されます。さらには行くべき施設にマーカーをつける念の入れようで、プレイする順序がわかりやすくなっています。

 なおPS5版は、ゲームデータを読み込む「ロード」の時間が極めて短く、快適に遊べるのもポイント。さらに言えば自動車を走らせたときの小刻みな振動もコントローラーを通じて手に伝わってきます。まるでハンドルを握っているような気分になるのです。

 リアル志向の自動車ゲームと言えば、「バリバリのゲーマー向け」の仕様と思われがちですが、車を知らない初心者へ徹底した配慮がなされています。

 アクセルとブレーキの踏み方や、走行時のライン取りもゲーム内でレクチャー。コーナーの曲がり方も何度も練習でき、失敗してもすぐリスタートして繰り返しトライできます。走行タイムも評価され、最高評価の「ゴールド」を目指して、何度も挑戦したくなる仕掛けがさまざまに組み込まれています。