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「それ、誰が欲しがるの?」青山の246号線でテールランプを追った日々から25年…「グランツーリスモ7」の現在地

「それ、誰が欲しがるの?」青山の246号線でテールランプを追った日々から25年…「グランツーリスモ7」の現在地

2022/03/05

genre : エンタメ, 娯楽

note

 初心者がゲームを遊ぶときに困るのは「次に何をすれば良いか分からない」ことと、「先に進めない」ということ。

 その点、本作はマーカーで「何をすれば良いのか」がパッと分かるよう明示されており、レースも難易度を調整しながらその人の腕前に合わせた楽しみ方ができるようになっています。遊んでいくうちに、さまざまな古今東西の名車なども手に入り、いつの間にかドライビング・テクニックが上がるよう設計されているわけです。

 同時に車の魅力を、分かりやすい言葉で説明しつつ、各自動車メーカーの歴史についても、豊富な写真、資料とともに眺めることができます。ここまで来ると、自動車の“写真・映像辞典”と言っても、誇張はない気がします。

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 実際、「自動車の運転が好きだけど、マリオカート以外のレースゲームの経験はゼロ」という人に同作を初めて触ってもらったのですが、のめり込むように楽しんでいました。コーナー前でスピードを落とし、アウト・イン・アウトという実際の運転の基本テクニックを守ると、きちんと速く走れるからです。クリア後にはリプレーの映像が流れますが、それも楽しそうに眺めていました。

 

「12歳の時から『グランツーリスモ』をプレイしてきた」F1レーサーも協力

 もはや「グランツーリスモ」はゲームの枠に収まっていません。2008年には「グランツーリスモ」を通じて、本物のプロドライバーを育成するプログラム「GTアカデミー」をスタートし、実際にプロドライバーをレース界に送り込んでいます。

 また、山内さん自身も積極的にレース活動に取り組んでおり、2011年のニュルブルクリンク24時間レースではドライバーとして出場し、クラス優勝しています。2013年にはアイルトン・セナ財団とのパートナーシップ、2014年にはFIA(国際自動車連盟)とのパートナーシップを締結しています。

 

 さらには、「グランツーリスモ6」(PS3)で山内さんが世界各国の自動車会社に「みなさんの考えるグランツーリスモをデザインしていただけませんか」とプレゼンすると、それを受けてメルセデス・ベンツやBMWなどの各社がオリジナルのコンセプトカーを発表するようになっています。

 現実のレーシングチームとの共同も生まれました。「グランツーリスモ5」(PS3)では、山内さんを筆頭としたゲームシリーズのスタッフと、F1のレッドブル・レーシング、そして「12歳の時から『グランツーリスモ』をプレイしてきた」というレーシングドライバーのセバスチャン・ベッテルがタッグを組み、ゲーム内で「地上最速のレーシングカー」を作ったのです。

 F1をはじめとした現実のレースには必ず何らかの規則がありますが、そうしたレギュレーションがなければどこまで自動車を速くできるのかという挑戦。

 そうして生まれた「レッドブルXシリーズ」は、F1の史上最年少ドライバーズチャンピオン記録を持つベッテルがシミュレーション用のハンドルコントローラーを握り、F1マシンの持つ鈴鹿のコースレコードを20秒以上短縮しています。これはまさに、本シリーズだから結実した“夢の産物”なのです。