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 パッケージ開発にも様々なエピソードがあります。例えば、当時一番知名度のあった森永さんのキャラメルと並べたときに埋もれないよう、その頃は珍しかった赤いカラーリングを採用した、などですね。ですが、やはり一番世間にインパクトを与えたのは、ランナーがゴールインする姿をかたどった“ゴールインマーク”のデザインでしょう。

大阪のランドマークにもなっている“ゴールインマーク”

――『グリコ』のパッケージに描かれたゴールインマークデザインは、ハツラツとした笑顔が印象的。この有名なデザインはどのように生まれたのでしょうか。

石橋 これは江崎が佐賀の八坂神社境内で、『グリコ』のスローガンやパッケージデザインを考案しているときに思いついたものです。このとき江崎は、お宮の馬場でかけっこをする子供たちの一人が両手を上げてゴールインする姿を目撃し、これこそ自分が求める健康の象徴だと感じたのだそうです。

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 それまで、近くの小学生たちにペンギンや花などの試作品パッケージを見せていたそうなのですが、このゴールインマーク版も加えて再度アンケートを取ったところ、圧倒的にこのゴールインマーク版が印象に残るという結果が出たことで、正式に『グリコ』のデザインに決まりました。

 その後、完成した『グリコ』をより広めるため、百貨店に置いてもらおうと考えた江崎は大阪の三越百貨店に通い詰め、1922年の2月11日に三越百貨店で販売することにこぎつけました。のちにこの日を江崎グリコの創立記念日として定めたほど、この瞬間は江崎にとって念願が叶った瞬間だったようですね。

“グリコの映画付自動販売機”。1931年に百貨店や地下鉄の中に100台ほど展開された。10銭を入れると30秒ほどの映画が流れ、その後『グリコ』とお釣りの2銭が出てくる。  

『絵の顔がこわい』にショック

――だが、そんな初代ゴールインマークが、とある少女の一言でさらなる変化を遂げたという噂がある。

石橋 ある日、江崎がデパートで販売の売れ行きを確かめるべく売り場を視察していた際に、とある女学生たちが『グリコ』を手に取ったのですが、最終的に買わずに棚に戻したのを目撃したそうです。今は若い子に急に声をかけたらびっくりさせてしまうかもしれませんが、どうしても理由が知りたかった江崎はつい、どうして『グリコ』を買わないのですか、と声をかけてしまったそうです。