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開発部長の熱意で押し切り、なんとか出たGOサイン

 そのアイディアは、食べやすい棒状のビスケットをチョコでコーティングしつつ、あえて根元の部分は持ち手としてチョコを塗らないで残す、というものでした。もちろんこれはのちの『ポッキー』に直接つながるものなのですが、意外にも会議では、1962年に誕生していた『プリッツ』の“味替え”にすぎないという意見や、チョコを残すためだけに機械も作らなければならないという意見など、散々な評価を下されてしまいました。

 ですが、その若い社員のアイディアを気に入っていたそのときの開発部長が、「自信があるので売らせてください」と熱意で押し切り、なんとか開発にGOサインがでたそうです。当初は試作品として『バタープリッツ』をまな板の上で転がし、手作りでチョコをコーティングしたものを作り、いくつかの店舗で反応を見るために試験的に販売したのですが、これが見事に売れまして正式に生産設備の開発が進むことになったというわけです。

栄養価の高いアーモンドを丸々一つ入れるという業界初の試みを実現した『アーモンドチョコレート』。江崎グリコは『ポッキー』誕生以前から人気のチョコ系商品を生み出してきた。

江崎グリコが見据える“次の100年”

――100周年を迎えて、どのようなお気持ちですか。

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石橋 私は1990年代の入社なので、30年以上勤めているのですが、そう考えると100周年の江崎グリコの歴史に3分の1ほどは関わってこられたと、感慨深くなることがよくありますね。

 今では、創業精神でもある“おいしさと健康”を第一理念に、お菓子以外の分野にも注力しています。ダマにならずに溶ける薄いプレート状のルーが特徴の『ワンタッチカレー』(現『プレミアム熟カレー』)や、激辛が魅力のカレー『LEE』、具材とともに炒めるだけでできるお総菜の素『バランス食堂』など、すでに市場にある商品とは違うものを作ろう、という視点からの開発や創意工夫の発想は受け継がれているんです。

国民食となっていたカレーのルーに新風を吹き込んだ『ワンタッチカレー』。お菓子以外にも江崎グリコは様々な商品を出してきた。
“毎日の健康や美容を応援する”として、2014年から発売されている『アーモンド効果』など、創業精神“おいしさと健康”を実現するために多くの商品を創り続けている。

 今年は100周年という記念すべき年ですから、“次の100年”を担う次世代が人気商品のさまざまな資産を受け継いでいけるよう、今一度襟を正さなければいけないと闘志を燃やしております。

(文=TND幽介〈A4studio〉)