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最高気温6度の真冬にヤシの木「非日常のテラス」

 3階からはテラスに出られるようになっている。しかし取材時には整備中だったため、立ち入ることはできなかった。窓から覗くと北風吹き荒れる中、ヤシの木が揺れていた。最高気温6度の真冬にヤシの木、これまた非日常である。塚本氏の話によると、東屋の下にはハンモックが吊るされて誰でも休めるようにする予定とのことだ。

「学生たちの憩いの場所にしたかったんです。なぜ南国風にしたのかというと、南国ってリゾート地なので安らぐじゃないですか。元々、南国風のお城にするという案もあったので、その名残というか要素を残したかったんですね。とにかく、どこにもないようなお城を作りたかったので、いろいろなアイデアを出しました」

3階のテラス。奥の東屋にはハンモックが設置される 提供:大阪芸術大学

 どこにもないようなお城、非日常、塚本氏の言葉からは新校舎に対する強いこだわりを感じる。どうしてそこまで新校舎のデザインにこだわるのだろうか。奇抜なデザインの校舎で話題作りをして受験者を集めたかったのかと邪推したところ、「受験に間に合わすのなら11月の完成は遅いんですよ」と否定されてしまった。

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新校舎で講義が行われるのは来年度から

「うちの入試は9月にはほとんど終わってしまうんです。竣工式の時にも『これで受験者増えるんちゃうか?』と言われましたが、その時初めて『そういう事もあるかも』と気づいたくらいです。

キャラクター造形学科新校舎。空き地は駅伝部のクロカンコースになってた ©文藝春秋
キャラクター造形学科新校舎の背面 ©文藝春秋

 

 このデザインにしたのは学生たちに夢のある空間を与えたかったからなんです。学科長が『我々が教えている芸術は生きていく上では必ずしも必要ではない。でも、人間は夢が無いと生きていけない』と言っていました。同じく、この校舎の細かい装飾も校舎としては必要ないんです。でもあったほうが夢がある。ここで学ぶ学生はアニメや漫画といった夢を作る人たちなので、夢のある空間でわくわくしながら創作をしてほしいんです」

 この新校舎で講義が行われるのは来年度からだという。夢の中のような非日常で4年間学んだ学生たちは、いったいどんな夢を我々に見せてくれるのだろうか。