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《不肖宮嶋、最後の戦場取材へ》「こりゃ報道の神から見放されたわ」ウクライナ西部リビウに辿り着いたカメラマンが見た“戦時下の光景”

《不肖宮嶋、最後の戦場取材へ》「こりゃ報道の神から見放されたわ」ウクライナ西部リビウに辿り着いたカメラマンが見た“戦時下の光景”

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2022/03/10

genre : ニュース, 国際

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報道の神から見放されたとあきらめかけた時に…

 そして「ウクライナ全土に空爆」「キエフ国際空港ロシア軍に占拠」とのニュースが。

 キエフ便はあかん、ウクライナのほかの空港は? どこのエアラインが飛んでるんや? ウクライナ中の空港がすでに閉鎖? そやったらどこが近い?

 出発予定だった25日を過ぎてもウクライナ入国のルートすら定まらないどころか戦況はますますウクライナ軍に不利に働き、こりゃあホンマに報道の神から見放されたわ、いや、やっぱ2年間のブランクで相当勘働きは鈍ってるわ、とあきらめかけた時であった。テレビニュースからポーランド国境にウクライナからの難民が殺到し始めている、と伝わった。

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©iStock

 そうや、ウクライナは東をロシア、北をベラルーシ、西をルーマニア、モルドバに囲まれている。北と東のロシア、ベラルーシは当然あかんから今や戦争難民は西に逃げるしかない。そして同じ西ならNATOに加盟しており、第2次大戦でソ連に攻め入られ、戦後もソ連の衛星国として苦難の時代を共有してきたポーランドである。

 かくして当初の予定を1週間ほど過ぎた3月2日深夜、日付が変わったばかりの0時50分、全日空便で羽田からフランクフルトへ、そこからルフトハンザ機でポーランド、クラクフ空港に乗り継ぎ、その日のうちに陸路でウクライナ入りと皮算用を立てた。そしてこのスケジュール前提でPCR検査の書類を48時間以内で揃える必要が再びでてきた。

羽田空港 ©iStock.com

もはや思い残すことはない。この歳になったら、これが最後の戦場になろう

 3月2日午前9時。前々日予約していた羽田空港のPCR検査場で唾液による検査を終え、いったん帰宅してからも、まあバタバタしたが、昼過ぎに検査前に登録していたメイルアドレスにPCR検査結果が届いた。

「陰性」

 英文の陰性証明を22時までに羽田空港で受け取るよう通知があった。これで行くしかなくなった。報道の神は不肖・宮嶋に早く行けと掲示を与えたのであった。

 羽田空港国際線ターミナル内全飲食店は新型コロナ禍のため20時ですべて閉店である。日本で摂る最後の晩餐は行きつけのすし屋で早めの夕食となるはずだった。

 この歳になったら、これが最後の戦場になろう。せめて思い残すことのないよう寿司でもつまも、とバックパックの紐をしめ始めた時であった。見慣れぬ番号から携帯電話に着信があった。

 全日空からであった。