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《不肖宮嶋、最後の戦場取材へ》「こりゃ報道の神から見放されたわ」ウクライナ西部リビウに辿り着いたカメラマンが見た“戦時下の光景”

《不肖宮嶋、最後の戦場取材へ》「こりゃ報道の神から見放されたわ」ウクライナ西部リビウに辿り着いたカメラマンが見た“戦時下の光景”

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2022/03/10

genre : ニュース, 国際

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出発時刻を過ぎてもバスは現れず

 19時20分。1時間前からターミナル外で震えながらバスを待つも出発時刻を過ぎてもバスは現れる気配はなかった。国境向こうは戦時下である。定刻通りにバスが来るほうがおかしいっちゅうもんや。国境の向こうでは100万人以上のウクライナ人が難民となってこの寒空のした今も、こちらポーランドの安全な土地を目指して殺到しているのである。一晩くらいここですごすぐらい、銃声下やないだけましやないか。

クラクフ空港(2018年)©iStock.com

会話も笑い声もない、戦争当地国に帰る車

 19時50分。目の前に室内灯が消されたまっくろなでっかい2階建てバスが止まった。運転席と助手席に男2人の姿が見える。ナンバーは「2223」。

 えっ? これか? 窓をノックしてプリントアウトしたチケットらしきもんを差し出す。

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「リュボフ(リビウのロシア語読み)?」「ダー(そうだ)」

 助手席の男がチケットをむしり取るなりバスから降りてきて荷物をカーゴスペースに放り込んだ。ほかに乗客は一人だけだった。

 バスは空港ターミナルを離れると途中クラクフ駅前広場らしきところで止まり、さらに老若男女合わせ10人近くの乗客を乗せ再び出発した。しばらく町中を走ったがやはり暗い。雪や泥がこびりついた薄汚れた車窓の向こうは高速道路の街灯が見える程度、やがて真っ暗になった。

 会話も笑い声もない。これが戦争当事国に帰る車である。これがウクライナから脱出するバスならおそらく立錐の余地なくぎゅうぎゅう詰め、悲鳴と怒号が飛び交っていることであろう。遅かれ早かれここから脱出する時を想像しただけで気が滅入る。