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《神戸連続児童殺傷事件から25年》“少年A”への疑念を決定づけた「ある警官の職務質問」とAが語った内容とは…?

《神戸連続児童殺傷事件から25年》“少年A”への疑念を決定づけた「ある警官の職務質問」とAが語った内容とは…?

『二本の棘 兵庫県警捜査秘録』より #1

2022/03/14

genre : ニュース, 社会

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 父は上場企業に勤務するサラリーマンで、母は専業主婦という家庭。Aは3人兄弟の長男である。下の弟は、淳君と同じ小学校に通う同級生で、仲のいい友だちだった。淳君は、Aの弟と遊ぶためによくAの自宅を訪れていた。

 Aには、大阪、神戸の医院に通院歴があり、小学生時代から動物虐待やホラー趣味が顕在化していたことが分かった。

 特異言動として把握した最初の事例は、小学5年生当時、図工クラブにおいて、段ボール箱に人間の首から上を乗せた作品を制作したことだった。また、小学6年生のとき、3学年下だった淳君に対し、頭部を殴ったりするいじめに及んでおり、その際は教師引率で被害者宅に謝罪に行っていたことも分かった。

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同級生に対する暴行・脅迫事件

 中学校でも、同級生に対しAは「自分以外の人間がみな野菜に見えてしまう。野菜を潰しても悲しむ人間なんか誰もいない」といった発言をしていたとの証言も入手した。成績はあらゆる科目において平均以下で、地元で不良グループを形成していた。

 Aは淳君の事件が起きる2週間ほど前の5月15日より、不登校になっていた。原因は2日前の5月13日に起こした、同級生に対する暴行・脅迫事件である。

友が丘中学校の正門 ©共同通信社

 この日、Aは「自分の悪口を言っている」と同級生を5、6発殴った後、刃渡り約13センチのナイフを取り出し、同級生を脅す事件を起こした。同日、被害を受けた同級生の父が交番を訪れ、警察も事案を把握することとなった。

「人の命はアリやゴキブリと同じや!」

 翌日、友が丘中学校で指導を受けたAと教師の間で、次のようなやりとりがあった。

「君は、人の命を何と思っとんや」

 すると、Aはこともなげにこう言い放った。

「人の命はアリやゴキブリと同じや!」

 そして、Aは母に対し「これが限界や」と打ち明け、以後不登校状態になった。

 実は、この情報をいち早く捜査本部に上げたのは、生活安全部少年課の警部補だった。この事件では、3名の捜査員が本部長賞詞(個人)として表彰されているが、警部補はその3名のうちの1人である。

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